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episode11-6 正しい人
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「今回のことは警察には言わない」
男はカラカラと音を鳴らしながらトイレットペーパーを手に取る。
そして泣きじゃくる俺の顔や身体を拭い始めた。
「今回だけはな」
言いながら手は休ませない。
すぐにぐちゃぐちゃになったトイレットペーパーを便器に投げ入れようと蓋に手を伸ばし、蓋の上に溜まった白濁に触れて思い切り顔をしかめる。
乱暴に蓋を開けて拭う作業を再開させる。
俺は泣くことしかできなかった。
頭の中で押し殺そうとしてきた言葉を初めて他人に言われた。
男の言葉は正しかった。
正しい生き方を指し示した。
そしてそうできないことが辛くて仕方がなかった。
俺はかなり真面目に生きていた方だったと思う。
優等生だとよく言われた。
自分でもそうあろうと努めていた。
だから自分が今していることが正しく無い、だなんて分かりすぎるほどよく分かっていた。
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