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「おに、づか......?」
誰だっけ、聞いたことあるような...
「え!?名前も忘れたん?りゅーくん可哀想...」
俺のスマホの画面ロック解除番号知ってるくせに記憶喪失のこと知らないとかどういうことなんだコイツ。
「そういや会った時俺のことも忘れてたしなぁ...ほんまにまきまきなん?別人ちゃうよな?」
アホは放っておこう。
「.........あ、思い出した。手紙の人だ。」
「手紙?」
そう。
病室で貰った手紙の差し出し人が、" 鬼塚龍二 "で、いろいろ探ったのもすっかり忘れてた。
「りゅーくんが手紙?絶対ウソやん書くわけないわ。イタズラちゃう?」
「でも貰ったし。本人が、渡しに......来た。」
「はぁ!!?もっと無いわ!!」
そうだ。あいつはあの時、「お前の、友達から」と言った。俺は、友人からの手紙を代わりに渡しに来た不良さんぐらいにしか思ってなくて。
「友達」って自分のことだったのか。
そんな回りくどい言い方しなくてもいいのに。
「友達から、って......言ってた。」
「ウン?」
「俺は、あいつの何なのかって、一緒に住んでてずっと考えてたんだ。友達?そんなはず無い。友達だったらもっと...」
もっと......なんだろう。
「もっとなに?優しくして欲しいーとか?せやなぁ...友達やったら一緒に遊んだり、気まずくなる事もなく会話も弾むし。」
「......うん」
「まきまきはりゅーくんのことどういう風に思ってんの?」
どういう風に...?
「...怖い。」
「それから?」
「し、身長とかでかくて目つきも怖いし、声、低くて...」
「うん。」
「それから...
...もう忘れたい。あいつの事全部。」
「なんで?」
「嫌いだから。」
嘘じゃない。嫌いなのは本当のこと。
だってきっとあいつもそう思ってる。俺を見ては眉間にシワを寄せる。
駐輪場で女の子と話してる時はあんなに優しい声で、俺には低くて怖い声。
今もそう、家では可愛い女の子と一緒なんだろう。
そんで俺は、要らないもののように扱って。
「......きらい。凄く。」
自分に言い聞かせるように言った。
こうしておかないと、寂しさで心が潰れるだろうから。
あいつは俺のことが嫌い。
蹴ったり、初対面で「キモい」とか言えちゃうくらい。
だから、
俺もあいつのことが嫌い。
これでいい。
こう思っていれば、傷つかなくて済む。
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