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『どうせ大人の付き添いだろ?暇なら遊ぼう』
『え?あ……』
そこで唐突に遥人の視界は回転し、強引に腕を引かれたところで、自分の意識が小さな自分へ入ったことに気が付いた。
『なんで泣いてるの?』
『名前は?』
『そっか、俺は……』
いつの間にか周りの景色は、暗闇から広い庭園に変わっている。
幼い自分の隣に座り、快活そうに話す少年の顔はぼやけて見えないけれど、ずいぶんと長い時間を彼と過ごしたような気がしてきた。
――どうして……忘れてたんだろう。
彼と会ったは小学校の夏休みだった気がするが、今になるまでそんな出来事があったことすら忘れていた。
「……なま……え」
「目が覚めたか?」
彼の名前を思い出そうと記憶の糸を手繰り寄せるが、すぐ近くから響いた声に遥人の意識は覚醒し、それと同時に少年のことは頭の隅へと追いやられる。
「うなされてたようだが、苦しくないか?」
なぜなら、ここにいるはずのない大雅が、すぐ目の前にいたからだ。
「ここ……は?」
「保健室。熱が高いようなら、病院へ運ぼうかとも考えたんだが……熱自体はそこまで無いから、とりあえずここに寝かせておいた」
「ありがとう……ございます」
付き添いは堀田だったはずなのに、いつのまに大雅になったのか?
ガンガンと痛む頭で遥人は考えようとするけれど、記憶はどこか霞んだように白い靄(もや)で覆われていた。
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