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「おい、ちゃんと説明を聞けよ。何で花の向きがバラバラなんだよ。お前の認識では太陽が三つも四つもあんのか!」
確かに、先輩は太陽が上にあると考えて花の向きを見ながら生けてねって言った。
「…難しいんだよ。」
俺様にじょうめ。そもそも、花の向きって何だよ。表、裏って、わっかんねえんだよ。
俺にばっかり怒るなよ。くそ、指導してくれてる先輩も苦笑してる。前髪越しに隣のいちのみやを見た…なんだ、案外うまい。いや、花道の良し悪しは分かんないけど。
笑顔で先輩と話しながら、楽しくやってる。いいな、俺もこんなに威圧感感じながらやりたくない。
「はあ?生ける前に一度回して良く見ろ。そしたら向きだって分かるだろが。」
ムカつく。簡単に言いやがって。カチンときた。つか、カチンとくるのカチンって何の音だ。いや、音じゃないのかも。まあいい。
「そこまで言うならやって見せてくれ。」
ふん、どうせ出来ないだろ。
「分かった。」
「あ、」
ぽいぽいと、俺が苦労して生けた枝と水仙が抜かれた。全部抜くとか、何だよ!
「回すから良く見てろ。」
形の整った長い指先が枝をゆっくり回す。明らかに、葉の裏がたくさん見える面と、表がたくさん見える面がある。
「で、表が分かるか?」
「こっちだ。」
「そ、正解。ほらな、表と裏ってあるだろ。太陽があたる方向に花や葉の向きが行く、それが自然ってやつ。」
「そっか…そうなんだ。」
やっと分かった。先輩はそれを教えてたのか、やるなにじょう。
「あれ、花道やった事あるの?よく分かってるんだね。」
先輩の感心した声。
「まさか。先輩の説明聞けば、こんくらい分かりますよ。」
それ、俺を馬鹿だって言いたいのか。なんだよ、見直した俺の一瞬を返せ。
ほらやれよ、って急かされて枝を挿した。
「で、この三本の枝を三角形になるように向きを考えながら挿す。次に水仙。」
俺に水仙を渡して、枝の手前に挿すように指導する。でも、全体のまとまりを考えてやるようにも注意される。気が付けば、すっかり先輩の指導要らなくなってるし、夢中でやってる自分がいた。
花道用のはさみで短く切った小菊をあしらい、大きな葉っぱで剣山を隠して、…完成。おお!意外に良いんじゃないか。
「わあ、二人とも初めてにしてはうまいね。」
先輩たちも褒めてくれる。隣のいちのみやを見た。すごいな、にじょうの指導でなんとか出来た俺のよりも完成度が高い。いや、俺のだって良いと思う。
「どうだ、少しは楽しめたろ。」
「…まあ。」
確かに、楽しかった…かも。花とか生けるの初めてだし、集中もしてた。にじょうのおかげなのか。
「よし、じゃあ入部だな。」
「は?」
「本当、良かった!あ、これ入部届。」
先輩は、テキパキと書類とボールペンをにじょうへ渡した。何故かつらつらと、三人分の名前を書く。
一ノ宮至、二條誉、三鷹文。
「へえ、みたか君ってぶんって名前なの?じゃあ、ぶんちゃんだね。」
一ノ宮が言う。いや、ぶんじゃないし。まあいいや。どうせ深く関わる気はない。
「ぶんじゃない。あや。」
訂正したのは二條だった。
「ふうん。でも、ぶんちゃんが可愛い。」
そんなやり取りしながら、先輩に入部届を差し出すのに気付きハッとした。
「おい、俺は入部しない。」
「はあ?人に花代を奢ってもらって、感謝の気持ちはねえのか。お前は花道部に入部して、その気持ちを伝えるべきだろが。」
出た。何様、俺様、二條様。
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