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俺は二度目の部活にまた四苦八苦していた。一度目で掴んだと思っていたコツとか挿し方とか、色んなものがすっかり抜けてる。はっきりしてるのは太陽は一つだって事。
まず何を選んで生けるべきかも分からない。どうしようかと思って、隣のテーブルで和気あいあいと話しながらやってる先輩たちを見た。でも視界を遮る前髪と、隣にいる奴が邪魔でよく分からない。
「……。」
仕方ない。ちらりと左隣の二條を見た、左利きの二條は手がぶつかるからって自ら左端に行った。長い枝を切っている。
それから右隣の一ノ宮を見た、こっちも長い枝をパチリと断った。
なるほど、枝が一番目。
なんでか俺が真ん中にいる。カップルは隣同士で並ぶ決まりとかないけど、でも俺は邪魔なんじゃないか。
まあいいや。二人はすっかり慣れた様子で、順調に生け始めてる。本日の花材は、薔薇とかすみ草と、背の高い葉のついてない枝とシュッとした葉っぱ。なんかさ、俺のイメージでは花道って菊とかの和風なものだったけど、案外自由なんだな。
「どうした。全然進んでねえな。もしかして…分かんねえの?」
二條がこっちを見た。あ、もう絶対あれだ。はあ?一度やった事は覚えろって、そんな感じでののしられるパターン。
「いや、大丈夫。」
見よう見まねで1本しかない枝を取る。切るべき長さの基準が分からないし、この枝には葉っぱがない、回してみても表も裏も分からない。
はぁ、
溜め息でる。
「ぶんちゃん。見て見て、すっごい柔らかいんだ。」
一ノ宮が持ってる枝をくにゃりと曲げた。輪っかにして剣山に挿す。え、と思った。だって、そんな事をしていいのか…、
「お、いいなそれ。文の枝は元々の形が波打ってるし、それ活かすのも面白いかもな。」
あれ、怒らないのか。俺はぽかんと二條を見た。
「自由花って言うんだ。生花は流派もあるし、様式によって生ける時の決まりとかもあるらしいけど、ここでやってるのは自由花。花や枝の表裏は気にするけど、自由な発想で生けていい。どうするか分かんない時は周りに聞く。」
落ち着いた説明にびっくりした。だって前回は、はあ?の連続だったし、一度聞いたら理解しろって態度だった。
「ぶんちゃんはまだ二回目なんだから、分かんない時は言ってね。俺もまだ分かんない事多いけど、そん時は先輩もいるしね!何度かやってみて思ったけど、毎回花材が違うから戸惑う事もいっぱいあるんだ。でね、なんとなく分かってくるっていうか、」
「だな。意外と奥深い。だから、俺も反省した。花道は一度聞いて分かったつもりでも、二度目はまた違う。だから、何度でも尋ねる事も必要だ。」
「そう…なんだ。」
二條は飲み込み早いし、すごく理解力がある。だから、愚図な俺の気持ちとか分かんないだろうって決めつけてた。
「ぶんちゃん。せっかく入部したんだから、いっぱい楽しもう。作品に失敗とかないんじゃないのかなって思うんだ。感性は人それぞれ。自分が好きならそれでいいし、思うままにやってみようよ。」
一ノ宮がのんきに笑う。いつも能天気で、俺にはよく分からない思考回路の奴だって思ってた。
「うん。」
やっと、素直に返事が言えた。
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