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部活で生けた花は各自持ち帰る。前回は突然だったし、家に持って帰って花瓶がないんで困った。結局、1リットルのフルーツジュースの紙パックをよく洗ってから、口を全開にして水を入れそれに挿した。
「今日もそうするか。」
花が枯れて捨てる時も楽。水をこぼしてそのまま全部捨てられる。
狭いアパートの台所に立ち、乾かしていた牛乳パックを手に取った。今日の花材を全て入れる。赤い薔薇ってほんとインパクトあるな。他のものに紛れずパンチが効いてる。
薔薇って存在感すげえな。
その言葉を、あの時の声通りに思い出した。あれから二條は黙ったままで、一ノ宮が俺に話しかけてくれてたけど…なんて返事してたのか覚えてない。
「どこに飾るか、」
迷って、前回と同じく食卓へ置いた。うちの玄関は狭くて、小さな靴箱の上には入りきらない靴が乗ってる。だから、花を飾るスペースって、あとは食卓くらいしか思いつかない。
「おっ!なんかこの前より食卓が立派に見える。薔薇って好きかな、いや…そもそも花を好きかも分かんないな。」
そういや、顔を合わせたのっていつだっけ?カレンダーを見る。
「えっと…先週は会ってないか。その前の週に会ってる。」
確か日曜日に、薄物の着替えとかを取りに来てたな。バイト帰りの俺とは入れ違いで出て行ってた。
「昔はもっと、会えるのが嬉しかったのに。」
祖母と田舎町で暮らしてた時は、転勤先からの父親の帰りを今か今かと待ってた。また仕事先に向かうのを、泣いて引きとめようともした。
「懐かしい。小学校二年の時だったな。」
祖母の死から、父親と一緒に色んな県を転々とした。中学三年でこの市に住んでからは、高校の事もあって父親だけが単身赴任中だ。
「次の予定、聞けなかった。」
固定電話の留守電のボタンが赤く灯ってれば、父親の帰る日が録音されている確率が高い。今日はまだ赤くない。
「今度はバイトとかぶらないといいけど。」
五月のシフトを頭に思い浮かべる。土曜か日曜のシフトは三回ほど。連休中も入ってる。
「連休って帰って来るのか?」
ゴールデンウィークは明日からだ。
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