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夕飯の席は、一ノ宮の父親、母親、俺たちと三人と…それから、同じ商業高校に通う三年生の姉だという夏さんとの六人だった。
人のうちの家族に紛れて食事をするなんて緊張する。しかも、ベンチタイプの椅子に俺たちは三人並んでいる。何でだろう、また俺が真ん中。それで、一ノ宮が俺の事を家族へ紹介した。
「至の新しい友だちか。しかも三人とも同じクラスとかさ。うちの高校は男子少ないから、これは貴重だわ。」
向かい側のベンチにご両親と並んで座る夏さんは、自分の揚げた唐揚げを箸で掴んで俺の顔をじっと見てる。
なんか、…変な人だ。前髪が短いから相手の顔がしっかり見えるけど、俺の顔もよく見えるんだと思うと嫌な表情とか、そうそう出来ない。
「うんうん。ふふふ。」
何を頷いているのか分からないけど、本人は楽しげな笑顔で唐揚げを頬張った。ようやく視線が逸れる。ホッとした。
食卓に並ぶ、ご飯、味噌汁、唐揚げ、サラダ、オムレツ。夕飯のほとんどは、この夏さんが作ったものらしい。俺もオムレツを食べる。おお!美味しい。
「あれは、悪魔だ。あんまり関わるな、」
「…悪魔、」
小声の忠告は左隣に座る二條から。悪魔というのは、こんなにも気軽に目の前に現れるものらしい。しかも、髪の長い女子高生の姿をしているのか。
「でね、ぶんちゃんも花道部なんだぁ。」
一ノ宮の家族への、俺の紹介はまだ続いていたらしい。
「へえ。花道部気に入ってくれたんだ。なかなかいい部活でしょ?花道部男子とか萌える!」
燃える?
「…まあ、夏にしてはちゃんとした部活を選んでくれたとは思う。」
「何よ、誉。ちょっと棘のある言い方じゃない?」
「身に覚えがねえのかよ。」
呆れた様子で呟く。ずいぶん悪魔とも親しげにしてる。
「あら、なっちゃんが花道部勧めたの。いっちゃんにしては珍しい選択だと思った。」
一ノ宮の母親が言うのに、隣の夏さんが頷いた。
「友だちが部長でさ、新入生の勧誘に苦戦してるって言うから至を紹介したんだ。そうすれば誉も入部するから、二人は確保出来るでしょ。でも、まさか三人も入部したなんてね?。」
今度見に行くから、と笑う。成る程、この人が元々の原因なのか。
「来なくていーし、」
二條は他人んちで、何でこんなに言いたい事を言えるのか。俺様だからか。
次々と移る話題。みんなが笑っているのを眺める。俺の斜め前にいる一ノ宮の父親は無口だ。一言も何も言わずに、でも楽しそうに笑ってる。年齢も俺の父親よりは十歳は上だろう。これが家族の団欒なんだなって、ぼんやりと思った。
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