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一ノ宮の部屋にダブルの布団を一枚敷いた。シングルの布団が二枚は入らなかったからだ。で、俺と二條がそこへ寝る流れになってる。…いや、どうなんだろう。シングルのベッドは一ノ宮の物だし、客なんだから床に敷いた布団で寝るべきだけど…ほら、カップルなわけだろ。俺が二條と一つの布団で寝るのは正解なのか?
「文。寝る場所はどっちがいい?」
枕を並べた布団を指差す二條。ああ…。
「…じゃあ、こっちかな。」
とりあえずベッド側じゃない方を選ぶ。
「了解。じゃあ風呂に入ってくる。」
二條が着替えを持って部屋を出て行く。階段を下りていく足音が止むのを待って、一ノ宮に言った。
「え、えっと…あのさ、俺がベッドで寝たら…ダメだよな?」
「あ、ベッドじゃないと眠れないとか?じゃあ代わろうか。」
確かに、家ではセミダブルのベッドで一人で寝てる。元々は父親の物だったけど、今は俺が使ってる。父親が帰って来たら譲って、シングルの布団を敷いて寝るって事に自然となった。
「いや、布団でも寝れるけど。そうじゃなくて…あのさ、二人は付き合ってるんじゃないのか?だったら俺がベッドに寝た方がいいかなって。別に、そういう事に偏見とかないから!二人とは仲良くしたいし、友だちだって紹介してくれて嬉しかった。これからも友だちでいたいって思ってる。これは本音だから。」
一気に言った。恥ずかしい。
一ノ宮は軽く口を開け、ぽあーっとしたよく見かけるぼんやりな様子。それから何故か笑顔になった。
「ぶんちゃん!かわいい!」
ぎゅぅぅうぅ。抱き着かれる。
「…っ、一ノ宮、苦しい。」
「あ、ごめん!ぶんちゃんってほっそいし、小っちゃい。ご飯もさ、少食だよね。もっとたくさん食べないと大きくなれないよー。」
「…ちゃんと食ってるし。体型の事は気にしてるんだ。一ノ宮だって細いと思ってたのに、案外しっかりした体つきなんだな。」
「ああ…、俺は中学時代は水泳部だったからかなあ。ほーちゃんもだよ。小学校の時も一緒に習ってたんだ。」
「水泳部、」
納得。ウエストは細く締まってるけど肩とか張ってる体型。当然、俺が借りた一ノ宮のティーシャツもサイズが大きい。スウェットはまあ大丈夫。
「うん。でも高校は水泳部ないから、何の部活にしようか迷ってたんだ。」
「そっか。」
あ、話が逸れてる。
「で、どうしようか。二人が付き合ってんなら、俺がベッドの方が問題ないだろ。」
「ぷっ。それ誤解。何でそうなってんの、」
面白そうに笑いながら言われる。あれ?
「え…そうなのか?」
「俺たちは従兄弟だよ。うちの母親とほーちゃんの母親は姉妹。」
「従兄弟、」
道理で、一ノ宮家のみんなと二條の馴染み方が凄いと思ってた。でも、もしかしたら俺が知らないだけで、交際してるとこんな感じの付き合い方になるのかなって。
「ベッドに寝たいなら代わるけど、どうする?」
「じゃあ、布団で。」
「うん。」
机の横に置かれた本棚。そこには少年漫画がずらりと並び、BL小説なんてどこにもない。あれ、あの本ってどこに行ったんだろ。
「なあ、俺がバイトしてた時に買ってた本はどうしたんだ?」
「えっ、何の本?」
うわ、言い辛い!
「えっと、あれ。男同士の…BL小説。」
くぅ!恥ずかしいって!
「ああ!あれは姉ちゃんに頼まれて買ったやつ。」
「えっ!頼まれてって、…よく買えたなあ。」
「うん。売り切れてなかったよ。」
違う、そうじゃない。売り切れとか、そんなんじゃなくて、ハートの強さ!その話!
「一ノ宮って凄いな。俺はお前を見直した。」
「え、そう?なんか分かんないけど、ありがとう。へへ。」
うん。本当、俺にはない強さだ。
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