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眠れない。あんなにクタクタだったのに、眠れない。髪切って貰ってる時にうたた寝したからかも。
一つの布団で誰かと寝る経験…家族以外では初めてだ。電気を消した室内、隣の二條を見る。こっちに背中を向けてるけど、すう…すう…と規則正しい寝息が聞こえる。白いティーシャツの、俺の父親とは違う薄い背中。目蓋を閉じて耳を澄ませると、一ノ宮の寝息も確認出来た。俺も呼吸を合わせる。
今日の楽しかった事がたくさん頭に浮かんだ。思わず頬が緩む…このまま眠れたらきっと楽しい夢になる。
「文。」
間近で控え目に呼ばれ、ん〜と返事した。父親かと最初は思った。まだ眠い。
「文。」
あれ?なんか声が違う。…で、ハッとした。目蓋を開くと、直ぐ目の前に顔がある。なんか、あれだ、整った顔……あ!
「うわっ、二條。」
「うわって何だ。失礼だな。それより、この足退けろって。」
また小声。ん?足?
「あっ、ごめん!」
「しー、至は寝てるから静かにな。」
唇に人差し指を当て、また小声だ。俺は頷くと慌てて足を退けた。抱き枕みたいに二條の腰の辺りに、右足を乗っけて向かい合わせで寝ていたとか、くぅ!不覚!いや、それより俺様を抱き枕扱いとか…怒ってないかな。
「重かったろ、本当ごめん。」
横になったまま小声で、両手を合わせて再度謝った。
「いや、軽かったし別にいーけど。それより案外寝相悪いな。くくっ、」
あれ、小さな声で笑ってる。良かった。
「わざわざ起こさなくても払い退けて良かったのに、」
「ああ、…そう言われるとそうか。」
考えもしなかったって感じで頷く。二條は、案外優しい。
カーテンの隙間から朝の光が差し込んでて、二條の長い睫毛と黒眼が茶色に透ける。キラキラしてて、本当に綺麗な奴なんだって思った。立ち姿もスッとしてるし…そうだ、容姿端麗って言葉がぴったり。
「今何時だろ…、七時過ぎか。」
二條は枕元のスマホを取って時間を確認した。俺のスマホはジーンズのポケットに入れっぱなししで、部屋の隅に置いてある。ある程度の使い方は、一ノ宮と二條に教えて貰った。
「なあ、目覚ましのセットの仕方を教えてくれ。」
明日から学校。いつもは目覚まし時計で起きるけど、父親がスマホの目覚ましを使ってるのを思い出した。俺のもリンゴマークの同じ機種だから出来ると思う。一ノ宮と二條も同じやつだ。
「おう。」
二條の返事を聞いて、ごそごそと這い出す。ジーンズのポケットからスマホを取り出し、うつ伏せで再び布団に入り込む。二條も体をうつ伏せて頭を寄せ合う。互いの息が感じれる程に近い。…なんか、緊張する。
「この時計の中に目覚ましも入ってるから…」
タップする動きを真似て、同じように画面を切り替えて操作する。目覚ましのセットは案外簡単だった。
「おー、成る程。慣れれば簡単なんだな。」
「うん。あ、そうだゲームのアプリとかも入れるか?」
「ううん…、まだいいや。今度お勧めのがあったら教えて。」
「そっか、」
きっと、あんまりしない気がする。ゲームとか得意じゃないんだ。
「とうっ!」
掛け声?と思ったら、いきなり俺と二條の入ってる布団の上に、どさりと塊が降って来た。
「ぐえ、」
「イテッ!」
潰されたのは俺。頭がぶつかったのは二條。
「いぃたぁるぅ…、」
地を這う声、後頭部を抑えて呻いてる。
「二人ともおはよう!こそこそ話して何してんの?俺も入れて!」
「…おはよう。目覚ましのやり方を習ってたんだ。それよりさ二條が瀕死だから、」
「ありゃ、」
一ノ宮はそれほど痛くないのか、ぶつけた額を軽く撫でてへらりと笑った。
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