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「で、何が欲しいか決まったか?」
とんかつ屋を出て、父親が尋ねる。ここは駅に近い店で近くに大きなショッピングモールがある。歩いてもそんなに時間はかからない。そのショッピングモールを目指す父親の隣を歩く。
「…ううん。」
もう、本でいいかも。とんかつ食べてる時も聞かれて少しは考えた。でも思いつかない。プレゼント要らないって言ってるのにな…。父親は、誕生日に何かを贈るという行為に大きな意義を見出しているのかもしれない。
「あのさ、そっちがプレゼントしたいなって思うものでいいんだけど…、」
躊躇いがちに申し出た。その方が嬉しい。でも、迷惑かな。図々しいかな。俺のためにあげたい物を考えさせるなんて、そんな時間を取らせる事を要求したりなんてさ。
「俺が決めていいのか?でも、それじゃあ欲しくない物になるかもしれないだろ?」
「…やっぱり、本にしようかな。」
それが無難に思われる。
「文へ贈りたい物か。」
俺の言葉は聞こえなかったのか、父親は隣で考え始めてる。どうしようか、もう一度本でいいんだと言おうか…迷って口を閉じた。
「この服の方が似合うな、」
「…そう?」
前着たのと今着たの、どっちもさほどの違いは感じない。良くわからないけど、父親が似合うと思うものを一着でいい。
「ほんと、着る物に頓着しないな。この際だから何着か一気に買うか…体型も前よりも大きくなってきたろ。文に任せておくと、本当にサイズが合わなくなって着れなくなるまで着古しそうだ。」
「…そんなこと、」
「あるだろ。」
確かに…父親と離れた去年から服を買った記憶がない。父親と一緒に暮らしてた時は、季節ごとに服屋へ連れ出された。全国規模で支店を持つ量販店の店だったけど。というか、着る物にこだわりなんて無いからそれでいいって思ってたのに…今日の店はそんな感じじゃない。何だか良くわからないけど、父親いわくセレクトショップらしい。
「お、これ。これも着てみろ。」
新たな服を一式渡される。一緒についてる店員さんが、新たに何着か勧める物から父親が手に取ったもの。いったい、何着買うつもりなんだろう。取り敢えず受け取った服を持って試着室へ入る。俺の予定としてはまだ成長期だから大きくなるつもり。だから、そんなにたくさん買わなくてもいいんだ。
はぁ…。もう、このズボンいくらだ?このシャツも…。さっきから値段の書かれたタグとにらめっこしてる。…やっぱり、量販店のものにしたい。高い、高いだろー。
「文、着たのか?」
「あ、まだ待って。」
慌てて着てる服を脱ぎ、新たな服を着る。カーテンを開けた。
「ああ、これもいいな。」
「あのさ、一着でいいよ。」
「試着に疲れたか?」
「…うん。」
そういう事にしておく。
「なら、今着てる服一式とさっきの一式と…あとこれも。」
ぱっぱっと決めて店員さんへ言ってる。…もう一着じゃないし。結局三パターンの服をセットで買った。
「よし、後は靴だな。」
「え、靴まで、」
「サイズが大きくなってるだろう。少し窮屈そうだ。」
「でも、まだ履けるし。」
「サイズの合わないものを履いてると、足の指が変形してしまうぞ。ほら、靴屋はあっちだ。」
ショッピングモールには靴屋も入ってる。父親が示す方へ渋々ついて行った。
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