アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
7の2
-
梅雨明けたのち、一ノ宮があと残り何日だと毎日唱えている夏休みがやって来ようとしてる。俺はバイトのシフトと母親と会う日曜日の約束、それから一ノ宮と二條と遊ぶ約束を書き込んだ八月のカレンダーを見た。お盆休暇にしばらく帰宅する芳さんの日程は早目に報せが来てた、もちろんそれも記入済み。
カレンダーにこんなにたくさん予定を書き込むような休みを迎えようとしてるなんて、少し前の俺には想像もつかない話だった。
「課題は早目に済ませよう。」
目標は夏休み始めの七月中に全て。フレークを食べ終え、学校へ行く支度を整えると家を出た。今日は夏休み前最後の部活がある。ハサミは忘れずに鞄へ入れてる。今日は何の花材だろう。
「ぶんちゃんお願い。今度、カットモデルしてほしいんだ。髪伸びてきた頃でしょって、うちの母親の催促がうるさくて。」
小ぶりなひまわり。それを手にし長さを決めて茎を切ったところで、隣で拝むポーズの一ノ宮を見た。その両手の間に、何のつもりかひまわりが挟まってて、ぴょこんと突き出てる。何だか似合ってる、ぷっと笑ってしまう。
「いいけど、いつ行こうか?」
今日の花材はとっても夏らしい。小ぶりなひまわり、葉のついてない長い茎の薄紫の花の塊。緑に白い線が混じった長い葉っぱ、それからこれってシダなのかな…そんな濃い緑の葉っぱもある。
「良かったぁ。今度の金曜日、終業式後にどうかな。バイトは入ってなかったでしょ。閉店後にしか出来ないから、夕食も出すし帰りは車で送って行くから。ほーちゃんもだよ。」
「おう。」
ごく軽い返事。左手で器用に花を生ける、利き手だから当然だけど何だか不思議だ。その姿を横目に、終業式の後一度帰宅してから訪れる約束を一ノ宮へする。
俺には許しを得るのに、二條にはそんな一切を省き勝手に予定を決めても許されるとかってさ…。こんな場面はよく目にする、二條が一ノ宮へそう振る舞う事もある。家も近いし、互いの部屋を共有する機会も多いらしい。互いの都合もよく分かっているようだ。俺の乏しい想像力で考えたんだけど、家族とか、兄弟とか、そんな感じだろうか。とにかく、互いを知り尽くした身近な存在って事なんだろう。だからこその、互いへの寛容さ。すごいなって思う。俺はそんなふうに振る舞える相手はいない。
「あ、そうだ!夏休みどこに行くかも話し合わないとね。枕投げも全力でやんなきゃ。」
「いや、全力で挑まなくていいだろ。」
二條の突っ込み。
「なんだとう、枕投げは全力でやるべきだよ!枕投げ大会だってあるんだから、もっと意識を高く持たないと!」
「いや、この三人だけだろ。団体戦とかやるんじゃないんだから、ゆるくやろうぜ。」
呆れた口調で二條が言う。成る程、枕投げって大会まであるスポーツなんだな。へえ。
二人で俺をまたいで色々言い合ってる。いつの間にかどこに出かけるかの話に変わってしまう。
「文は行きたいところあるか?」
「俺はこの辺の土地勘もあんまりないし、どんな所に行ったらいいのか分かんないから任せていいかな、」
「じゃあ、ぶんちゃんには当日までどこに行くか内緒にしとくね。サプライズのが楽しめるでしょ。」
「そういや、この前の遊園地もサプライズだったな。」
「ははっ、本当だ。でも、今度は出かける日にちは分かってるから大丈夫。財布とスマホと着替えを忘れなければ、ある程度はどこへでも行ける。」
きっと、三人で行けばどこでも楽しい。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
48 / 73