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「至、ストップ。」
「あ、体の向きが、」
「もらったあぁぁ!」
がつ!渾身の一撃を外した一ノ宮。シートを敷いた上に乗ったスイカは揺らぎもしない。タオルで目隠しした彼の発案。カッと照りつける日差しの下、庭でスイカ割りの最中だ。
「次はぶんちゃんの番、頑張って。」
かつて使っていたという、ジュニア用の野球のバットを渡される。
「え、やった事ない。」
「大丈夫、声で誘導するからバットを振り上げて下ろすだけだよ。」
言いながら、一ノ宮はタオルで俺に目隠しをしてしまう。
「うわー、ほんと顔ちっちゃい。なにこれ目隠しヤバイ。いけない事してる気になる。」
ヤバイとか、いけない事ってどういう感想…。
「アホか!」
気配しか分からないけど、ポカリと頭を叩かれたのか、イテッと一ノ宮が声を上げた。
「…文、目隠しはきつくないか、大丈夫そうか?」
「うん。」
俺の腕を引いてるのは二條の手?ゆっくり移動する。止まったところで離れる温かな手のひら。
「ぶんちゃん、そのまま真っ直ぐ進んで。」
バットを前に構えてそろそろと踏み出す。目が見えないのに、何の支えも無しに歩くの怖い。というか、これ真っ直ぐ進んでるのか?ぜんっぜん感覚が分からない。
「そこ、振り下ろせ。」
「え、ここ?」
少しだけ力を込めバットを振り下ろす。ガツ、と手応え。でも弾かれた。
「うわ、なんか手首にジーンと来た!」
「あははっ、非力過ぎて可愛い。」
「ぷっ。もっと力を入れてやんねーと割れねえって、」
笑いながら目隠しを解かれる。近くにあるスイカは、少しだけ表面がえぐれてるけどほぼほぼ無傷。まだジンとしてるこの手首のダメージ…虚しい。
「次はほーちゃんね、」
二條は頷き、自分で目隠しをする。きゅ、とタオルを縛る動作で、半袖のティーシャツから出た腕の筋肉が動く。程よく細くしまっていて長い腕は、夏の日差しの下で泳ぐ姿を連想させる。見てみたいな、きっと綺麗に泳ぐんだろう。
それにしても端正な作り。目隠ししていても、その下には美しい姿が隠れているんだろうと思わせる。いや、むしろ見えない部分がある事が想像を豊かにするんだ。ヤバイとか、いけない事って意味が分かった。何だろな、一ノ宮の目隠し姿はまさしくスイカ割りスタイルだったのに。
「ほーちゃん、髪の毛ボサボサだよ。」
もう同じ身長の二人。乱れた髪を梳く一ノ宮は、触り慣れた様子で整えてる。二條も大人しくされるがまま。
「あ、色気があるんだ。」
「…あれ、聞き間違いかな。なんか今…色気って言った?」
ぱちぱち瞬きし、少し首を傾ける一ノ宮。
「はあ?何の話してんだ、」
タオルの下に隠れてるせいで表情の分からない二條。
「二條って、色気あるなって…。」
「はあっ?」
「ぶんちゃん…それは本人に言っちゃダメ。ほーちゃん恥ずかしがり屋さんなんだから。この無防備なところがいいんだよ。」
わざとらしく声を潜め、二條に聞こえるように言う。
「っ!いーたーるー、悪魔に感化されんな、」
「それ、お互い様だよ。そもそも、姉ちゃんはほーちゃんのせいでああなったんだし。美しい従兄弟が身近にいる悲劇。」
この後一ノ宮は、手元が狂ったとわざとらしい言い訳の一撃を辛うじてかわした。怒りに満ちた二條の快進撃はスイカをもあっさりと真っ二つにする。恐ろしい。
もちろん、三人でそのスイカは美味しくいただいた。夏の日の、いい思い出が出来た。
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