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声の限り7
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プルルルル、プルルルル
静かな家に、コール音が響いた。
「はい」
『もしもし、福永さんのお宅ですか?警察です』
「えっ。福永ですけど…」
部屋の片付けをしていたら、突然警察からの電話。
何かやらかしたのかな。
いや、多分俺じゃないと思う。
法には触れないように生活してきたし。
そういう心がけしてる時点でどうかと思うけどさ。
別に前科とかないよ。
『……そう。あなたは福永招平くんね』
「なんで俺のこと知ってるんですか」
『…あなたのご両親がさっき車の事故で亡くなったの』
だから「気をつけて」って言ったじゃないか。
何してんだよ父さんも母さんも。
全く昔からドジなんだから…………………
「…え、亡くなっ…」
『そうよ』
電話の向こうこら聞こえる女の警察官の声が、冷徹に感じる。感情を感じない、氷のように冷たい声。
ガツンッ。
後頭部が殴られたみたいに痛い。
でも、涙はまだ堪えれた。
何がそうさせたかはわからない。
でも、こんな時にまで涙を我慢できた自分が少し怖かった。
「 」
自分が「わかりました」って言ったつもりの時間が、空白になった。
え?
「 」
『招平くん?もしもし?』
「 」
何度やっても声が出ない。
喉を締め付けられてるみたいだ。
右手で喉をさすった。
形容しがたいあの孤独感が、また俺を襲ってきたらしい。
上手く息ができない。
俺はその場に立ち尽くしていた。
手の力がフッと抜けて、電話の受話器を落とした。
コツンッ。
その音が響いた家の中が、シンとした。
今日から俺はこの広い家で、ひとりぼっち。
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