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声の限り8
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「今日から転入生が入るの。仲良くするようにね」
担任の女教師は俺を教室に促した。
声が出ないことは誰にも言っていない。
言う必要もないと判断した結果だ。
入学手続きはすでにしてあったから、声を出す必要がなかったんだ。
ところで、今俺は眠い。
すごくだ。
俺の引き取りで親族が揉めてるらしく、連絡の電話が来る。
夜遅くに、何度も何度も。
決まって連絡してくる叔母の後ろでは、必ず誰かが誰かを罵倒してる。
たまに聞こえてくる会話は、思ったよりも残酷で。
まぁそれぞれの言い分もわかる。
お金や教育の問題は仕方ないと思うし、俺も別に引き取ってほしい訳じゃない。
ただ、誰も手をさしのべてくれない現実にちょっとだけ、ショックを受けただけ。
俺は鉛みたいに重たいまぶたを無理やりこじ開け、ふらつく足で教室に入り、黒板に『福永招平』と書いた。
そしてクラスメイトをぐるっと見渡し、よろしくの意を込めて一礼する。
そのまま倒れてしまいそうだった。
「えーっと、自己紹介してもらってもいいかな」
160cmくらいの女教師は困り顔で、180cmそこそこの俺を見上げる。
どうすればいいかな。
自分のことを全部黒板に書くのもだるい。
俺は小さく首を振った。
すると女教師は都合よく、俺を恥ずかしがり屋だと勘違いしてくれたらしい。
感謝感謝。
「緊張してるのかな。じゃあ、空いてる…あそこが君の席だよ」
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