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声の限り31
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『How are you?』
「…日本語でお願いします」
『はうわーゆー?』
「別に日本語英語にしろって意味じゃないんだけど」
『招平は相変わらず冷たいなー。そんなことより私、今東京にいんのよ』
「えっ?美貴、日本に帰ってきたの?」
『そーだよー。あんた今宮崎にいるんだっけ?』
「宮城だよ」
『宮城?どこ?』
「…日本の上の方」
『それは北海道でしょ!まぁ、冬休み中に東京戻っておいで。引っ越しの手配はしとくから』
茂庭さんが帰ったあと、一本の電話がかかってきた。
俺の母方のいとこの猿渡美貴。
今年で27になる。
そして本気で日本の上の方は全部北海道だと思ってるらしい。
「って、え?俺東京戻んの?」
『だからそー言ってんじゃん!』
明らかに苛立ちを含んだ声。
美貴はバカだけど、英語だけは聞くのも話すのも得意で、今は英会話塾の講師をしてる。
「まじかよ…」
『母さんからいろいろ聞いたよ。あんた大変だったんだってね』
「えっあぁ、まぁ」
俺ははたと思い出す。
「美貴、話聞いたんなら知ってるでしょ?俺が誰にも引き取ってもらえないって」
『あぁ、聞いたさ』
あっぴろげな声が笑った。
『私一人暮らしだから、あんたを引き取ることになった。お金の心配はしなくていいよ』
「えっ!そうなんだ。あり、がとう」
東京に戻れる。
嬉しい。
手を差しのべてくれる人がいる。
また音駒のみんなに会える。
けど、茂庭さんや二口と離れちゃう。
学校に行かなきゃ。
二口や茂庭さんに伝えなきゃならないことがある。
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