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声の限り33
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「福永」
俺を呼ぶ声がする。
もうそれは茂庭さんや二口じゃないけど、同じように安心できる優しい声。
目を開けると、そこには夜久さんが立っていた。
「夜久、さん…」
「福永、おかえり」
フッと花綻んだような夜久さんの笑顔が、茂庭さんと重なる。
「ありがとう…ございます」
すぅと息を吸ってみると、音駒の、体育館の匂いがした。
ダァンッ。
虎のスパイクが黒尾さんに阻まれた。
目の前では、部員がちょうどブロックの練習をしてる。
でも、リードブロックじゃない。
コミットブロックだ。
…鉄壁を誇るブロックは、もうここにはないんだ。
「リードブロック、したかったな」
ポツリと言った俺の言葉は、夜久さんの耳に届いたらしい。
「リードブロック?」
「…宮城で通ってた学校のバレー部が、リードブロックだったから」
夜久さんは少し驚いたようだった。
「そうなの?」
「はい。鉄壁、です」
俺は身震いした。
伊達工と対戦したい。
もう一度茂庭さんや二口に会いたい。
ブロック練を抜けてきた海さんも俺の隣に来る。
俺の表情を伺い、ポン、と肩を叩く。
「いい仲間に出会えてよかったね」
海さんは微笑んでその場を離れる。
それを遠い目で見ていると、ガッと両方から肩を組まれた。
右は黒尾さん、左は虎。
「おうおう福永。お前はまた音駒の一員なんだぞ?」
黒尾さんは怒ってるのか冗談なのかわからない口調で言う。
「俺らじゃ不満なのかよ?んん?」
虎の喧嘩腰は相変わらずだけど、それが逆にホッとできた。
俺は静かに首を振る。
「音駒も大好き」
でも伊達工も大好き。
「福永…」
研磨だ。
「全国でその学校と当たれたらいいね」
コクッ。
俺は大きく頷いた。
「さ~て?そうなったら全国行くために練習だ練習!!春高は待っちゃくれねーよ!」
黒尾さんは俺と肩を組んだまま、夜久さんの肩を組んだ。
「ほら、集まれ!円陣すんぞ」
あー。
アレやるのか。
久々だなぁ。
研磨や海さんも巻き込まれて、6人は円になった。
「俺達は血液だ」
背筋がゾクッとする。
「滞りなく流れろ」
黒尾さんは不敵な笑みを浮かべる。
「酸素を回せ」
研磨はぶすくれてるけど、組んだ肩をほどこうとはしない。
「脳が正常に働く為に!」
今絶対みんな同じ気持ちだ。
「いくぞ音駒!!」
「「オォーッ!!」」
行くぞ、全国。
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