アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
宿す想い
-
1日が始まったばかりなのに、もう終わりを求める1限。
お腹がすいて、(昼休みはまだか…)と時計を3分ごとに見てほぼ終わりの2限。
そして4限まで、以下同文。
やっとお昼を食べられた、あぁ眠いな~と意識を手放す5限。
もう授業を聞こうともしない、妄想の捗る6限。
なるほど。
こうしてみると成績があがるはずのないことがよくわかる。
対して、湊。
授業中の姿を、チラッと盗み見る。
…やっぱりだ。
思った通り、物凄く授業に集中している…
わけもなく、ぼーっとしている。
僕と変わらないじゃないか!!
なのになんで成績にこうも差がでるんだ…
「神様は理不尽だ…」
気づけば心の中の声が口からもれていた。
幸いにも周りには聞こえていないようだ。
授業を受けているフリをとるだけ、僕は湊より絶対マシだ。
湊なんて、なんだあれ。
ぼーっとしながら外なんて見ちゃってるぞ、たそがれてるぞ。
実を言うと、たそがれ続けている湊を、ただ黙って見つめ続けられるこの時間が僕は好きだったりする。
目があったらどうしようっていうハラハラと、湊を見つめながら感じる淡く小さなドキドキ。
心地いいな。
そんな気持ちを感じながら、午後の暖かい空気にまどろみかける僕に、容赦なく(一部の人間だけ)必ず眠くなると評判の先生がとどめをさしにくる。
だめ、寝ちゃ…授業…成績……
また湊に…言われちゃう……
寝た。
キーンコーン
「んっ…」
頭に何かが触れる感覚に目を覚ます。
「やだ…ん、やめて」
右側の髪の毛を掻き回されるのが嫌で、寝起きのかすれた声で反抗し、左を向いた。
すると今度は左側をわしゃわしゃされる。
何度か右、左と繰り返し、遂に僕は根負けした。
「なんてしつこいやつなんだ…」
「なかなか起きないおまえを起こしてやってるんだろ」
「湊?!」
電話をすればずっと話していて欲しいと思うような、自然と聞き役にされてしまうような、少し低く透き通った声に反射的に身体が起きる。
「考えてることすぐ口から出る癖、危ないから気を付けろよ」
なんてちょっと笑って言ってくる。
「ほら、帰るぞ」
差し出される、教科書の詰められた鞄。
きっと湊が、僕を起こす前に全部やってくれたんだ。
「ありがとう」
「ん」
こうして今日も、一方的にドキドキハラハラさせられる1日が終わった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 4