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焦燥感。 *光汰side*
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「はっ……っ、は……、…!」
スマホに表示されたマップを睨みながらひた走る。
その尋常でない様子に通行人も何事かと振り向くが、そんなことさえ全く視界に入らないくらい、俺は焦燥感に駆られていた。
酸素が脳に回りきっていない感覚がして、意識は朦朧としている。
怒り、悲しみ、疑問に不安…そしてそれらを覆いつくしても余りあるほどの恐怖感。
”春ちゃんを失ってしまうかもしれない”
そう思う度に全身の細胞があまりの絶望に活動を停止しようとする。
しかしここで止まってはならない……絶対に、止まるわけにはいかない。
そう立ち止まろうとする足を叱咤して走り続けていても、自分の力ではどうにもすることができないことだってある。
いつもなら全く苦にはならないたった数分の信号の待ち時間でさえ、今の俺にとってはひどく長く感じられた。
イライラしながら信号が変わるのを待っていると坂口から連絡があった。
煩わしく思いつつもそれを開くと、そこには部活のことはなんとかしておいたから心配するな、という旨の文が端的に表示されていた。
おそらく少しでも俺の邪魔にならないようにだろうが、返信不要という文言までご丁寧に付け加えられていた。
ここまであの坂口に気を使われておいて間に合いませんでした、なんて名誉に関わる。
……駆け付けた時がどんな状況でも、必ず春ちゃんを助け出す。
改めてそう強く心に刻み、赤から青へと変わった横断歩道を駆け抜けて地図の示す場所へと急いだ。
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