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邂逅。 *坂口side*
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昨日個人的に色々あって…本当は今日は学校を休みたかったが、それで皆勤記録が止まってしまうのも惜しい気がしたので俺は渋々学校へ向かった。
いつもより少し早い時間に来たせいか人はまだまばらで、いるのは朝練に励んでいる生徒くらいだった。
一応来てみたけど……教室にいたんじゃ、”あの人”が来るかもしれないしな…。保健室に行って、HR終わったら理由をつけてすぐ帰らせてもらうか…。
そうしよう、と教室に向かいかけていた体を回転させて保健室の方に歩き始める。
「…あ」
「…ん?」
一応杉野に連絡を入れておこうとスマホをいじっていると、保健室前でちょうど朝練へ行こうとしている大宮とばったり会った。
無視すれば良いのに、俺の姿を認めると大宮は小さく声を上げ、きまり悪そうにその場に突っ立っていた。
おかげで俯きがちに歩いていた俺はその姿に気付き、二人の間を妙な気まずさが漂う。
「…えーっと。久しぶりだな、こうやって面と向かって会うのは。」
「え、あぁ……まぁ。そうだな…」
「…誰かさんがずっと俺らのこと避けてたからな。」
「………、……………すまん。」
何か言いたげな大宮より先に沈黙を破ると、どこかほっとしたように当たり障りのない返事が返ってきた。
その生温い様子に苛立ち少し棘のある言い方になってしまったが、大宮はうろたえることなく、素直に謝罪の言葉を口にする。
予想外の潔さに少々面食らっていると、今度ははっきりとした口調で続けて言った。
「避けたことも、お前に迷惑をかけたことも、春ちゃんを傷つけたことも……もっと他に上手いやり方があっただろうし、俺がお前みたいに器用だったら、多分それもできたんだと思う。…俺は逃げた。向き合うこともそうだし…春ちゃんからも。でも、後悔はしてないんだ。これで春ちゃんが少なくとも俺のことで何かに巻き込まれることはなくなる。それに……。…俺はもう、春ちゃんを幼馴染みとして扱うことはできない。近くにいると、何をするか分からない。…だから、坂口が春ちゃんを見てて欲しい。身勝手なのは分かってるけど、お前しかいないんだ……、っ頼む…」
そう言い終わると、明らかに寝不足な顔を歪ませ、大宮は頭を下げた。
「……まさかお前のつむじを見る日が来るとはな。」
「………。」
「はぁ……全く、黙って聞いてれば…。…あのなぁ、俺は怒るのが苦手なんだよ。平和主義者だからな。」
「……」
「いや、怒るを通り越して呆れたというか……お前、何のために杉野が怖い思いをした場所に二度も行ったと思う」
「え……、いやそれは…………分からない」
「そーかい。…結論から言うとな、杉野はお前の悪口を言ってたのが許せなかったんだと」
「………………………は?」
大宮は体を起こすと、どういうことだ、という風に俺を見た。
「だから、むかついたから行ったの。一人で。俺に相談もせずに」
「は…………………それだけで?」
「そ。ばかだよなぁ~、帰りはどうするつもりだったんだろうな。明らかに不利で、それで何かされても文句言えないだろ。…でも大切なのは、杉野はお前のことになると本当に盲目だってこと。」
「……」
「てか、”自分のせいで”とか、自意識過剰だから。杉野はお人形じゃないよ。ただ守られるだけの存在じゃない…このままだと、二人とも自滅するぞ。話し合えよ、全く…。…何を怖がってるんだか知らないけどさ、伝える前から諦めてどうすんだよ。今時、小学生の方がまだ上手くやるよ…。だいたい、杉野は誰かを傷つけるようなやつじゃないってことぐらいお前の方がよく知ってるだろ?他人任せにしてんなよ。」
「………………そんなこと分か」
「ってないよ。最近の杉野は本当にこっちがみてられないくらい酷いよ。癖なのか知らないけど、擦って赤くなってる目が痛々しすぎ。誰から見ても、毎日泣いてるんだろうなって分かる程にな。でも本人はいつも通りっていうか、それ以上に明るくて…心配さえさせてくれない。取り付く島もないよ。…言っとくけど、俺じゃ手に負えないからな。もちろん友達として出来ることはやるけど、それでも最終的にどうなるかはお前の行動次第だろ。……あ~喋りすぎた。んじゃ、頑張って。明日の試合もな」
「…………」
明らかに動揺している大宮を置いて、まだ誰も来ていない保健室に入る。
しばらくすると、大宮の足音はゆっくりと遠ざかっていった。
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