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相談会。
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能面のような表情でぼーっと天井のしみを数えていると、突然、着信を知らせる電子音とともにテーブルがガタガタと鳴りだした。
「ッうわ、びっくりしたぁ……え、何…誰…?」
普段滅多にならない音に驚き、反射的に起き上がる。
テーブルの端に無造作に置いていたために、ぶるぶると震えた拍子にスマホは床へ落下する。
横着に側にあったハンガーで引き寄せようとするが、ぎりぎり届かない。仕方なくソファから降りて取り表示された着信元を見ると、それは意外にも坂口からだった。
なんで急に電話なんか、と疑問に思いつつも俺は緑色のボタンをタップした。
「もしもし…坂口?体調はもう大丈夫なのか?」
「ゴホン。…ピーンポーンパーンポーン♪…えー、これより。坂口先生による、迷える子羊のための恋愛相談室、出張相談会を始めまーす。礼ッ!!」
「は、え……はぁ…!?何言って…いや、どうした!?」
「礼ッ!!」
「いやあの…悪いけど、今はそういう気分じゃな…」
「礼ッッ!!」
「だから、坂口…」
「礼ッッッ!!!」
「えぇぇ…めっちゃ無視するじゃん……」
礼しないと話も聞いてくれないのかよ…。
「えっと……れ、礼…?」
俺が何か言うたびにだんだんと大きくなっていく号令に、とりあえず言われた通り礼をする。
「よろしい。えー、今回の相談者は杉野春さん、15歳。誕生日は12月15日の射手座、ベッドサイドにある棚の奥には、昔、幼馴染みの光汰君から貰ったものが大切に保管されて…」
「うわぁぁぁぁぁあ!!!!!なっ、な!?なんでお前がそんなこと知ってるんだよぉッ!?!?」
「情報提供者はk汰君です。…まぁ、基本プロフィールは以上として。相談内容は幼馴染みと喧嘩をしてしまって仲直りをしたいけどやり方が分からない、そして幼馴染みに対する自分の気持ちがよく分からない、の豪華二本立てです。」
「え……へ?そ、相談って?」
話の展開についていけずおろおろする俺をからかうのを辞め、坂口はさっきとは打って変わって真面目な口調で話し出す。
「……杉野はさ、どうして大宮のことを守りたいなんて思ったんだ?」
「え……そ、れは…。…あ、あいつが、なんか見てて危なっかしいから……」
「ふーん…本当に?」
ついいつもの癖で意地を張ってそう言うと、坂口は探るように確認してきた。
いや、そういえばもう全部話してたんだっけ…あの時は頭の中がぐるぐるしてて、何を話したかとか、結構あやふやだけど……そっか、ちゃんと話す、べきだよな。
「……俺のせいで、怪我させた…から。血だらけで、呼びかけても呼びかけても、全然返事してくれない光汰を見てから…なんか、人間ってこんな簡単に死ぬのかって…いや、まぁ生きてたんだけどさ。うまく言えないけど…もう、あんな光汰二度と見たくないなって、思って…」
「…そっか。じゃあ、どうして素直になりたいと思ったんだ?」
「…光汰に……嫌われたく、なかったから。」
そこまで答えて、俺は服の裾をぎゅっと握った。
俺は……何もできなかった。
昔からそうだ。光汰を守るどころか、俺の方が守られて、助けられて…迷惑をかけた。
素直にもなれず、光汰に嫌われてしまった。
本当に情けなくて、じわじわと滲んでくる涙を唇を噛んで耐える。
急に黙り込んだ俺の空気を察してか、坂口はそれ以上の質問はせずにゆっくりと話し始めた。
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