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事故。 *光汰side*
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出会った時からずっと、春ちゃんは俺のヒーローだった。
感情が他人より表に出にくい春ちゃんは、小学生の時……………いじめられていた。
もしかしたらそれは大人からするといじめとも呼べないような小さなものだったのかもしれないけれど。
でも
”人から悪意を向けられる”
その事実はまだ幼い子供が背負うには重すぎ、また耐えられないものだった。
それは春ちゃんにとっても例外ではなく、日を追うごとに春ちゃんからは元気がなくなっていった。
そんな春ちゃんとは対照的に、俺は最初の頃からは考えられない程の人気者になり、クラスの中心的存在になっていた。
俺の人見知りがこんなに早く直ったのも本人は否定しているけど春ちゃんのおかげが大きい。
春ちゃんと話すようになってから少しずつ自信がついていった俺は、いつしかクラスメイトとも普通に話せるようになった。
”春ちゃんは僕を助けてくれた。春ちゃんが側にいてくれたから今の僕がある。
今度は、僕が…助けないと”
そう思った俺は何度も春ちゃんのクラスへ赴きいじめている奴らから春ちゃんを守った。
それを何回も繰り返していると俺のことを目障りだと思い始めたのだろう、ある日の放課後、俺は近所の公園に呼び出された。
おそらく彼らは”少し懲らしめてやるだけ”、みたいな軽い気持ちで俺を呼び、傷つけるつもりなんて全くなかったのだと思う。
実際、春ちゃんに対しても小突く程度はあったものの、ほとんど口でからかっているだけだった。
でもそこで「事故」が起こってしまった。
じりじりとこちらに向かって近付いてくるいじめっ子たちから距離を取ろうと後ろにあったジャングルジムに登った時だった。
ちょうど掴んだ棒が雨上がりで濡れていたせいで俺は手を滑らせ、棒を離してしまった。
宙に放り出された俺は、約5mほどの高さから真っ逆さまに落下した。
ショックのせいで落ちた時のことはあまり覚えてないけど、全身の骨という骨が軋むような感覚とあの生々しい痛みはよく覚えている。
朦朧とした意識の中、走ってくる小さな足音が一つ聞こえてくる。
霞む目を薄く開けると目の前には綺麗な顔をくしゃくしゃに歪めて、泣きじゃくりながら俺の名前を必死に呼ぶ春ちゃんがいた。
「光ちゃんっ!!!ご、めんな…さっ…、ひっく…!光ちゃっ…おねがい……死な、ないでぇぇっ…!!ふぇ……うわぁぁんっ!!!」
流された涙の粒が俺の頬にぽたぽたと落ちてくる。
自分がだんだんと冷たくなっているせいか、春ちゃんの涙はとても暖かく感じた。
春ちゃんが、泣いてる…。
僕が…守らなきゃ。早く、なぐさめないと……。
でも伸ばそうとした手からは着地の時に擦ったのだろう血がどくどくと流れていて、これでは春ちゃんに触ることができない。
声を出そうと開いた口からはヒューヒューというただ空気が漏れる乾いた音しか出ない。
安心させないと。大丈夫だよって、笑って…でも、なんか……すごく眠い…。
津波のように襲ってきた眠気と体のだるさに勝つことができず、俺はそれに身をゆだねるように目を閉じた。
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