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罪悪感。
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「……こない」
「こないなぁー」
結局昼になっても光汰が俺のクラスに来ることは無かった。
昼食を食べ終わり、坂口と机を向かい合わせにしてそう話していると、3人ほどのグループになってたむろしていた女子たちが残念そうに喋っているのが聞こえてきた。
「今日光汰君こないね~」
「あ、なんか昼は男バスでミーティングがあるらしいよ?」
「えぇ~、そうなんだ~…。っていうか、それ誰に聞いたの?」
「もしかして本人から聞いたとか~」
「あははっ、違うよー!隣の男子がバスケ部だから、話してたのが聞こえただけだよ」
「なーんだ、びっくりした~。そういえば今日の放課後どこ行く?」「そうだな~…
「…だって。にしても大宮も水くさい奴だな、それならそうと杉野には一言くらい言えばいいのに。な、杉野?」
「う、ん……。まあでも、いつも約束してた訳じゃないし…」
……ショックだった。
――”部活だからしょうがない”、
その一言に素直に納得できない自分がいることに。
この正体の分からないもやもやとしたどす黒い感情には覚えがある。
昔、人見知りだったせいでクラスメイトから”全然喋らない人形みたいでつまらないやつ”、
そう思われていた俺は学校ではいつも一人だった。
でも光汰だけは周りのことなど気にせずにずっとそばにいてくれて。
それだけで俺は満足していた
――――つもりだった。
それは俺は光汰が俺の家に忘れていったものを届けようと、隣のクラスに行った時だった。
そこで俺は、光汰が沢山のクラスメイトに囲まれて……楽しそうに笑っているのを見てしまった。
その瞬間、俺の中にあの黒い感情がどろりと流れ込んできた。
そして幼い俺は気付く。
”光ちゃんは……僕といるのが楽しくて一緒にいてくれるんじゃない。いつも一人の僕が『かわいそう』だから、一緒にいてくれてるんだ―――。”
考えてみれば当たり前のことだった。
整った顔に、それを飾らない性格。明るく、誰とも平等に話すことができる。
そんな彼が好かれるのはごく自然なことだ。
今思うと、俺が光汰に感じている罪悪感ともとれる思いはここからきているのかもしれない。
笑っていた光汰がふとこちらを振り向きそうになって、咄嗟にドアの後ろに隠れてその場にしゃがみ込む。
「…っ、……ひっく…ぁ、ぅ……ッ、…うぅ……!」
こんな感情なんて―――――――――知りたくなかった。
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