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05.きみは魔法使い
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僕の日常が大きく変わった。
毎日が新鮮で、楽しくて、笑ってばかりで。
それはまるで魔法にかけられたみたいなキラキラした日々。
その魔法をかけたのは、間違いなく世留くんだ。
世留くんは、こんな僕に一緒にいてもいいんだと言ってくれた。
一緒にいたい。僕はそう強く願っていたけれど、僕と一緒にいることで世留くんまで何か言われるんじゃないかと思った。
情けない。
今思えば、僕は変わりたくないんじゃなくて変える勇気が無かっただけなのかもしれない。
僕は未だに顔を見られるのが嫌で、長い前髪と眼鏡で顔を隠している。
そんなこと、何の解決にもならないのに。僕がしてきたことが許されるはずないのに。
そう、僕なんかが世留くんや神崎くんたちと一緒にいていいはずない。
調子に乗って一緒にご飯を食べたり、放課後には遊んだり。
僕と彼らとじゃ釣り合わないって分かってた。
今日、そのつけが回ってきたんだと思う。
「お前……なんなんだよ!なんでお前みたいな奴が世留と一緒にいるんだよ!」
「おい、健二。やめろ。」
「お前みたいな陰キャラ野郎……目障りなんだよ!」
名前も知らない男子生徒は、僕に噛み付くようにまくし立ててきつい言葉を吐き出す。
彼は、誰なんだろう。
ただ、僕を酷く嫌っていることは一目瞭然だった。
「健二!……いい加減にしろ。それ以上言ったら殴るからな。」
「世留……。だってお前、クラス変わって急に付き合い悪くなったと思ったら、なんでこんなもっさいヤツと一緒にいるわけ……?わけわかんねぇよ!」
「わけわかんねぇのはお前だ。いきなり来たかと思えば、人の友人に暴言言いやがって。何様だ?」
世留くんが何か言ってくれている。
でも、それらは全てノイズがかかっているみたいで、何も聞き取ることが出来ない。
とても怖い顔をしてる。きっと怒っているんだ。
このままでは喧嘩になってしまう。
何か言わないと。
……僕は、何を言えばいい?
「お前、なんで黙ってんだよ!?口ついてんだろ!なんとか言えよ、おい!」
「あ〜……クソ!この狂犬野郎…。真緒!さっさとコイツの世話係呼んで来い!」
頭がぼうっとする。
僕、なんでここにいるんだろう。
「……ごめんなさい、」
「っ、陽汰?!」
ここにいたくない。このままでは泣いてしまいそうだった。
名前の知らない男子生徒に頭を下げ、僕は荷物も持たずに教室を飛び出した。
後ろから世留くんの声がしたけれど、振り返ることなんて出来なくて一目散に廊下を走り抜ける。
行き先なんてどこでもいい。とにかく一人になりたかった。
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