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「こんばんは。突然連絡してすみません、ユキさん。」
「世留から連絡来るのなんて久しぶりだから何かと思ったら、こりゃまぁ……ざっくりいったねー。」
休業日の閑散としたサロンで出迎えてくれたユキさんは、陽汰の前髪を見るなり目を細めてくつくつと笑い、とりあえず座って、と陽汰を椅子に座らせた。
陽汰は緊張しているのか表情が強ばっているが、ユキさんに任せておけば大丈夫だろう。
ユキさんこと雪慈さんは、俺の担当の美容師で俺が中坊の時から髪を切ってくれている。
当時、たまたまカットモデルとしてスカウトされ、それからはなんとなくユキさんにスタイリングを任せている。
今や人気のスタイリストとなったが、出会った当初から変わらず、気さくで感じのいい人である。
「髪綺麗だし、きっと髪質が良いんだね。ダメだぞー、こんな雑な切り方したら勿体無い。」
「まさかこんなことになるとは思わなくて……。」
「まぁ何事も失敗は付き物だけれどね。ふふ、後はお兄さんに任せなさい。」
痛みのない陽汰の髪を前にご満悦のユキさんの目が、いい素材を見つけたと言わんばかりに輝いている。
ユキさん曰く、これは美容師のサガというものらしい。
これも一種の職業病だ。
「ねぇねぇ、世留。彼、陽汰くんだっけ。髪カラーしていいかな?いいよね?」
「え、マジですか。……あー、まぁうち校則緩いんで大丈夫だとは思いますけど。」
「よし!お兄さんがとびきりオシャレにしてあげるからね!」
「え、あの、あんまり奇抜なのはちょっと……。」
大丈夫大丈夫!可愛くする!と完全に職人の表情をしたユキさんに、陽汰の声は最早届かない。
ちなみに我が校はそこまでバカ高では無いはずだが、服装や頭髪に関しての規律が何故だか異常に緩い。
身近な例だと、真緒は金髪だし、灯は茶色く染めた上にパーマまでかけている。
受験シーズンさえまともな容姿に戻せば、ほぼお咎め無し。
正に高校デビューをしたい学生にはうってつけの学校という訳だ。
「ちょいクセっ毛だからパーマは要らないなー。じゃあ、ちゃちゃっと切って染めちゃいますか!」
「え、染めるんですか?」
「うん。絶対にカッコ良くするし、なんならお金いらないから。ね、試しにしてみよう?」
「そんな、払います!あ、僕……髪型のことはよく分からないので、お任せします……。」
勢いに負けた陽汰が首を縦に振ると、やった!と子どものようにはしゃぐユキさん。
後はユキさんに任せておけば大丈夫そうだし、時間をどう持て余すか考えていた時。
後ろから、トントンと肩を叩かれる。
「はぁ、良かったぁ〜。間に合った!」
「あ、チハさん?ども、お久しぶりっす。」
「店長から世留くん来てるって連絡あって、めっちゃ走ってきたさ!もう全然来ないんだもん。」
息を切らせて来たのは、同じくこのサロンで働くスタイリストの千早さん。
ユキさんに憧れてこの店で働いているというチハさんは、一見チャラいが実はとてもストイックな人だ。
まだ若いがその腕は確かで、近々サロンの二号店を任されるらしいとの噂を聞いたことがある。
急いで来た理由とは、俺にカットモデルを頼みたいとのことで、俺がなかなか来ないせいでずっとこの時を待っていたそうだった。
最近切っていないせいでだいぶ髪も伸びてきたし、ひとつ返事で了承する。
普段はユキさんにしかカットをしてもらわないが、チハさんの腕なら信頼して任せられる。
後はお願いします、とユキさんに陽汰を託して、俺はチハさんに連れられてその場を離れることにした。
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