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06.憩い
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「………さい、」
「聞こえない。ほら、誠意を込めてハッキリと言え。」
前回の騒動の翌日。
髪を切った陽汰の前に現れたのは、騒動の発端となった健二と付き添いの洋祐だった。
以前とは別人になった陽汰の姿を見て狼狽えながらも、洋祐に首根っこを掴まれて逃げるに逃げられない健二。
気にしてないと陽汰は言うが、それでは示しがつかないと首を横に振るのは洋祐だった。
「っ、くそ……ごめんなさい!これでいいだろ!離せ!」
「……健二が酷いことを言って悪かったな。俺からも謝らせてくれ。」
「あ……大丈夫です。酷いことなんかじゃないです。事実でしたから。」
陽汰の言葉に、ほれ見ろと言わんばかりにでかい態度をする健二の頭を殴り、洋祐は再度陽汰に頭を下げた。
陽汰が髪を切ったのは健二のせいだと、当人以上に責任を感じているらしかった。
「健二は君に嫉妬していただけで、根は悪い奴じゃないんだ。どうかコイツとも仲良くしてやってくれないか。」
「そんな、こちらこそ仲良くしてくれると嬉しい……です、」
「ちょっ待て待て!なぁーに、勝手に話を進めてやがる!俺はこんなやつと仲良くするのは絶対絶ッ対ヤだからな!」
まるでお見合いを嫌がる息子のようだと真緒が茶化し、一層健二がそれを拒否する。
こういう奴なんだと陽汰に説明すると、戸惑いながらも頷く。
扱い辛いように見えて、扱い易いこの男。
こうなることは容易に予想済みで、この時の秘策も考えてあった。
「じゃあ、今日の集まりは健二だけ来ないってことだな。まぁ、仲良くしたくないっていうなら仕方ない。」
「は?なんだよそれ!聞いてねーし!」
「だって、仲いい奴らだけでやりたいし。嫌なんだろ?無理して来なくていいよ。」
わざとそう高圧的な態度をとってみれば、さっきまでの勢いはどこへやら。みるみるしおらしくなる狂犬。
少し意地悪をし過ぎた気もするが、こうでもしないとコイツは素直にならないだろうから仕方が無い。
ちなみに集まりというのは嘘ではなく、今日の放課後は陽汰の家にお邪魔する予定だ。
陽汰の母親が是非遊びに来て欲しいと歓迎してくれているらしく、挨拶がてら皆で遊びに行こうという訳だった。
ルナも持ち運べるゲージに入れて連れていく予定だ。
「うっ……すみません、俺が悪かったです、もうあんなこと言いません……。」
「えっと、多々良くん……?怒ってないので、顔を上げてください。」
目に見えて落ち込んだ姿の健二に、陽汰が遠慮がちに声をかける。
陽汰は優しい表情で微笑み、よろしくお願いしますと手を差し出した。
「……敬語止めろよ。タメなのにキショいだろ。」
その手を取ることなくぷいっと横を向く健二を見て、陽汰は怒るどころか目を細めて何度も頷いた。
どこか噛み合わないが、そんなちびっ子二人のやり取りが微笑ましくて、笑ってしまった。
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