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いち。
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*
チラリ
食器を拭きながら、遠くにいるまーさんを盗み見る。
真剣に豆を選んでいるのか、彼は僕の視線に気付かない。
「…………。」
僕は拭いたお皿を置いて、
少しずつ、少しずつ…彼のとの距離を詰めていった。
そして距離があと30センチとなった所で、彼が僕の方に視線を向ける。
「!!」
サッと、近くにあったカップを持って、僕は拭いているフリをした。
「??」
まーさんは僕を見つめて首を傾ける。
「カナウくん。」
ビクッ
彼は僕の持っているカップに指を差した
「それ…まだ洗ってないカップなんだけど…。」
「えっ??あ……!!」
拭いている手を止め、目線を下ろす。
そこには使用済みのコーヒーカップと、汚れてしまった布巾。
「…ほ、本当だ…。てっきり洗ったやつかと……。
あはは…、すみません…。」
「??」
さほど気にしなかったのか、彼は再びコーヒー豆の方に視線を戻す。
汚れたカップをシンクに置き、布巾を新しいのと取り替えた。
そして先ほどと同じ近い距離に戻って、皿を拭く。
彼に怪しまれず、
かつ近くにいれるちょうどいい距離
彼の存在を隣で感じながら、僕は頰を緩めた。
(…………幸せ……。)
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