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③御堂筋→←小野田
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横から吹く風に前後に並ぶ列を斜めへと変えた。
その横から見る御堂筋君は、高校時代より体が逞しく見え、そして同じように年も重ねて見えた。
チラリとみえた無精髭が、余計にそれを感じさせる。紫外線が強いのだろう。日焼けを重ねた肌は、高校生のそれとは違った。
高校を卒業してから10年はたっている。
彼を追い掛け10年。
ようやく、元の位置に辿り着いた。
聞きなれた自転車の音は、風の音と鮮やかな景色に吸い込まれては消えていく。
あんなに逢いたくて寂しくて切なくなって仕方なかったのに、今は高校時代の頃のように、高鳴る胸を苦しくも気持ち良く感じている。
逢いたいと思い続け、今ただ彼の側にいるだけで、僕はどうしようもなく幸せを感じている。
10年。いやそれ以上。僕の気持ちは何も変わっていなかった。
箱根の坂を下り追いかけるあの時間の中に戻ったような…。
「もう何年も、総なめしてんのやってなぁ」
突然の御堂筋君の声に驚き、少しだけ前に並び出た。
「スポンサーロゴで、ジャージ真っ黒やって~?」
そうなのだ。ありがたいことに秋葉原の店を始めとする企業さんから声をかけていただき、企業のロゴで埋め尽くされている。未だに信じられない、僕なんかにありがた過ぎる話だ。
「ほやのに!…まぁだサカミチィは、ホビーレーサーやて? ホンマに意味がワカランわ」
「ぃや、だって僕、ヒルクライムレースにしか参加しないし」
…平坦は相変わらずチギられてしまう。
「…知ってるか?」
御堂筋君は僕の方を向くと、今まで表情が読めなかったアイウェアを外し、僕の事を惹き付けるだけひきつけて肩を組んできた。
「世界でも、クライムレース人口比率が異常に多い上に人気なんは、日本がダントツなんやて」
ポンポンと肩を叩かれ、彼の腕は離れた。
彼はにんまり笑うと、僕のハンドルにハンドルを合わせ、速度を保った。
「つまりやサカミチィ。キミィは世界でも、十分通用するクライマーなんやと…僕は、思うで」
急に上半身を揺らし、カツンッとハンドルを当てられ弾き飛ばされそうになった車体を直すと、スピードを上げていた彼に、僕もペダルを回して合わせた。
「ちょっと待ってよ御堂筋君。あの僕は」
「そんなキミィに、質問デェス!」
彼は再びハンドルを合わせ、そして僕の手の甲にそれを重ねた。
「本場のコースを走ってみたいと思いませんか? このプロレーサー御堂筋翔クゥンと、二人で、この先もずっと一緒に」
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