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⑦御堂筋→←小野田
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頬をつねりに近付いた御堂筋君の指先は、予想に反して僕の頬をゆっくり撫でて行った。
その指の軌跡はまるで、涙が流れたあとのように敏感に彼を感じ取って、嬉しくてくすぐったくて、何とも言えない気分で僕は身をすくめた。
見つめる彼はより赤く色付いていくのに、眉間のシワはより深くなっていった。
その時何故だか、ふっと言葉がよぎった。
「ああっ!わかった。お見合いじゃなくて、お見舞いだよ御堂筋君!」
「…ハァ?」
僕は急に嬉しくなって、それまでの緊張の糸が一気に緩んでしまった。
「今度のレースの日にね、真波君のお見舞いに行こうって話になってて。あっ、あぁそっかそうだね。実は真波君、入院しちゃってて。だから箱学さんと総北OBでサプライズ訪問で。きっと驚いて笑ってくれるよね!」
レース参加者と観戦に来てくれる方の名を指折り列挙する僕の横で、彼は自身の額に手を当てた。
「…福富クゥンにやられた。あの男…いつから気づいとったんやろ」
ボソボソと呟いている御堂筋君の赤みはすっかり元に戻っている。彼の細めた目は窓の外へ向けられて、口角が少し上がっていた。
速くなりそうな呼吸に、僕は深呼吸した。
「あ、あの御堂筋君?」
彼の視線が再び僕に向けられ、思わず目を閉じた。
「僕、僕、御堂筋君の事が好きなんだす!」
思いの外に強く閉じたらしい瞼を怖々と開けると、両手で顔を隠す彼がいた。
「今更…。ボクゥそういうの苦手や」
いつの間にか長い脚まで折り曲げられ体は丸まり、彼の首筋はあまりにも無防備で、日焼けしていない首の下の方まですっかり真っ赤にしている。
「サカミチィの分際で、サカミチィの分際でッ」
籠った声がだんだん小さく聞こえた。
さっきまで僕が逆の立場だったのに、僕は見られたくないはずの顔を見たくて仕方がなかった。
「僕も…言いたくなっちゃったから」
丸くなった彼の曲げられた脚ごと抱きついてみた。
「ピャッ!?……い いきなり何するん?」
僕は見事に蹴飛ばされてベッドから落ちた。
彼の反応は驚いた猫の様で、威嚇するように座っている。
それに対して僕はベッドの縁から顔を出した。
「だって、僕、このまま御堂筋君が消えてしまうんじゃないかって…不安になって」
「アニメの見すぎや。何言うとんのや」
上がっていた肩を下げた御堂筋君は、僕に手を差し出し再びベッドに座らせてくれた。
「…ボクかてサカミチィに会いたかったんやから、消えるやなんてありえへんわ」
「……あ いたかった…って??」
復唱した言葉の持つ破壊力があまりにも強すぎて、眼鏡が割れてしまうのではないか。と馬鹿な想像をしながらも、頭は軽く沸点を超えていた。
「…どんだけ、赤くなりはるん?」
「だ だって~~~」
熱くて痛痒くなった頬を今度こそつねった。
「だってそんなこと一度だって言ってくれなかったし、そんな風に僕の事を考えてたのかと思うと…頭真っ白になっちゃうよ」
つねっている頬は麻痺してきたのか、よく分からない。
「待ってまって。ホントに本物の御堂筋君なの?僕夢見てるの?頬だってなんか痛いかどうか分から無くなってきたー。待って下さいね。考えるから」
「考えてもしゃーないわ。どうせまたすぐに何も考えられへんようになるしやなぁ」
頬をつねる手首を取られ、僕はベッドに手をついた。
「それにボクゥももう、なぁんも考えたないんよ」
近付く彼の顔に驚きながら、僕はただ口を閉じた。
彼の目は僕の唇のみを見ているようで、僕は唾を飲み込んでいた。
彼の口から漏れる息が、口に当たる。
「サカミチィ」
「ぅん?」
彼は右に首を傾けた。
「サカミチィ」
「ぅん」
今度は僕が首を左に傾けると、彼は肩に手を置いて囁くように言った。
「キスしても、ええ、よな?」
「…ん…」
軽く触れた唇は、ゆっくりと密着していく。
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