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⑧御堂筋→←小野田
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肩の彼の手が、僕の後頭部に回る。
僕は頭をもみくちゃにされ、時折剃り残しの髭が僕の頬に当たりながら、僕は御堂筋君の唇を啄んだ。
彼の両の手が眼鏡をどこかに拐うと、唇を割って舌が侵入してきた。
舌先が上の前歯の裏側をなぞり、下の歯列を確認し、息を止め身を潜めていた僕の舌にその身を伸ばしてきた。
指先は耳を撫で回し、そうかと思えば頭を引き寄せられ舌を吸われた。
息を吸うこともままならず、しかし求められるままに僕は応えた。
初めてのキスが甘酸っぱいだなんて、誰が言ったんだろう。こんなに息苦しいとは、誰も教えてくれなかった。それなのに止められないなんて…僕達はどうかしているんだろうか。
苦しいのか気持ちが良いのかが分からない。
いつ息を吸っているのかさえ分からない。
息をするために息をしているのか、キスをし続ける為に息しているのか、そもそも僕たちが皆がキスと呼ぶ行為を正しくしているのかさえも、よくわからない。
唇も、舌も、歯でさえも、彼を確かめるには足りなくて、僕の手はいつの間にかに体に巻き付いて彼の肩を離さない。
彼の手が首筋を覆う様にして顔を上向かせ、膝を付き合わせ接着した。
それでも物足りなくて僕は、隙間を埋めるように彼の足の上にまたがった。
互いにうなされているような息遣いで、 止まないキスに頭ももう働かない。
ごわつく下半身は、浮かせてみるとひどく寂しくて接触したまま、体重全てを彼の太股に預けた。
パーンと駆け抜けた快感の波に耐えるように、声が漏れないように、離れないように、彼の口に舌にと必死で吸い付いた。
「「っんあっっ」」
口が離れたのは、どちらが先だっただろうか。
互いの肩に顔をもたれさせ、肩で息をした。
止まらない下半身の解放感に、時折痙攣を起こす。
身を捩り、背を反らせ、それでも彼の肩から離れなかった。
甘えるように額を擦り付け、服越しの彼の鎖骨に噛み付いた。
「アホエロミチィ…」
「…な なぁに」
「ソレェ。最後までする…いう意味やないんやったら、一旦離れぇ」
名残惜しみながら、彼の体から手を離した。
気持ちは出来ていても、一線を越える物理的な準備はしていない。
今から一緒に…というほど、無知な子供でもない。僕達は互いにスポンサーを抱えたレーサーであり、大人だ…。
冷静になれば、簡単に分かることとだ。
それなのに、覚えたての温もりが消えてしまいそうで、泣きそうになる。
昨日までは、逢えるかどうかを気にして生きてきたのに、数センチの写真の中の彼に力を貰っていたのに。今は、ただ数センチの隙間ですら耐えがたい。
遠く海の向こう、加えて10年以上も離れていた事の方が嘘のようにも思えた。
せめて、と膝を合わせて僕は彼の顔を見上げた。
御堂筋君は、僕の手を持ち上げて唇に当てた。
「レースを控えたサカミチィに負担かけたりしない。それにもう今更、焦りもせぇへんよ」
─サカミチィは、ボクのモンやから─
背中を引き寄せ耳元で響いた声は、ズクンと僕を立たせた。
「まぁ言うても。ゆっくり行こか…なんて余裕、次は無いやろぉけど」
彼の唇から離れた手を彼の膝に置いた。
ほんの少し体重も乗せて、彼の体が動かなければいいと念じた。
「う うん。…でも」
「…動かれへんよ?サカミチィ」
睨まれるようにして、額が重なってきた。
「どうしたいのか言うてくれんと…。とってもニブいから、ボクゥ困るわ」
重なった額が強く押された。彼の唇は尖ったまま、僕を誘う。
「あの、も う一回、キスしても良いでしゅか?」
「無理やわ~」
僕の背中を引き寄せた御堂筋君は、ペロリと僕の唇を舐めた。
「今のんで終わらすなんて事、無理やろ?」
ニィと薄く笑う御堂筋君につられるように僕も笑った。
─真ん中で波打ったベッドは、そのまま僕達を深く沈めていった─
end.
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