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逆らえない!
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「うわぁ、おいしそ。食べていい、桂?」
この言葉だけを聞くと、普通に旦那が奥さんに飯を食っていいかという許可を取っているようにも思われるが、俺は残念ながら男だ。
「ああ。手、洗ったらな、義彦さん」
目を輝かせている彼に苦笑しながら許可を出す。
彼は俺を呼ぶとき、『桂』とか『ママ』と呼ぶ。まぁ、大半はママだ。なぜかと聞いたら、彼がここへ引っ越してくる前まで住んでいた国がお世話する人を『ママ』と呼んでいた名残だと言っていた。
なんか大の男が『ママ』と真顔で行っているのを見ると、少し面白い。だから慣れるまで少しにやつきがあった。
「勿論、手はもう洗い済ませてる。ベルホントと共に先ほど洗ったばかりだ」
犬の癖にエプロンをして椅子に座っているベル君の頭を撫でて言う。あからさまにその行動をやがる顔をするベル君だったが、ちゃんと返事をして目の前のキャベツ大盛りにくぎ付けだ。
「そう、それならいいんだけどさっ。ほら食べなよ、さめるよ?」
その似た二人の様子に苦笑しながらも、勧める。
俺の言葉が合図となって二人は食べ始める。なんとも美味しそうに食べるんだなと思いながら自分もスプーンを取って食べ始める。
ここ三日間、二人の世話を始めたわけだが。ベル君は普通の犬よりも行儀がいい。
今だって人間と共に食べられるほど、皿から一つもこぼさずに行儀よく食べている。
なんだってこんなにできているんだと思いながらも、まぁベル君だから?と言う理由で片付いてしまうのだから怖い。
飼い主曰く、『ベルホントは世界一、人間に近い脳としぐさができる犬』としてあの世界記録で有名な本に野載っているらしい。しかも飼い主と共に。
「なんだって義彦さんが飼い主なんだろうな」
苦笑しながらむしゃむしゃと口を動かしているベル君を見ると、きょとんと俺の方を見ている。
可愛いなぁと思いながらそのまま瞳を右に動かすと、腹立つ顔で炒飯を口にしている義彦の顔がある。
「べルホントは結局、俺じゃなきゃダメって話」
なぁーっとべル君の頭に手を置くが、あからさまに嫌そうで、この展開もなんかデジャブだ。
「どうかな? そのうちどっかに行っちゃうんじゃない?」
クスクスと笑いながらそう脅すように言うと、顔を少し青くしていく。
「……ごめん。ちょっとそれを桂が言うと、冗談に聞こえない」
むぅとしながら俺を見てくる。
……さっきのムカつく自信に満ちた発言はどうしたって言いたい。
呆れながら俺は、彼らと朝食を済ませたのだった。
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