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ユキトくんは相手との情事をやめ、
僕の方に向かってくる。
「……何見てんだよ」
「……ごめん、なさい」
僕は逃げ出した。
ユキトくんは首から汗を流していた。
それが頭に残って、
ガンガン僕を殴り付ける。
あの唇。
少しだけ見えた舌。
気崩した制服。
男らしくなった腕。
でも、僕より小さい身長……。
僕は父さんの家から近くの高校に通うことになった。
ユキトくんと同じ高校の制服。
それに身を包んで、転校生として教室に入る。
教室にはユキトくんがいた。
驚いたけど、僕は何とか平静を保って自己紹介をする。
その後、休み時間になると、僕はユキトくんに呼び出され、公園で見たことは誰にも言うなと言ってきた。
ユキトくんは僕を知らなかった。
名字が変わって、身長も高くなった僕を、
中学時代の同級生だとは、全然分からないらしい。
「誰かに言ったらただじゃおかないからな」
「うん、大丈夫。僕もだから」
「……え?」
ユキトくんは、僕を知らない。
原田 ナツキだった僕を知らない。
「……お前、……涼乃も、そうなの?」
「うん、僕も」
涼乃 ナツキである、
僕しか知らない。
――それでいい。
原田 ナツキだった僕なんて、いらない。
こんなに惹かれる人を忘れていた僕なんて、いらない。
「よろしくね、ユキトくん」
「おう……」
ユキトくんには、今の僕だけ見ていて欲しいから。
【ユキトくんは、僕を知らない:完】
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