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教室へ入ると、ホワイトボードに自分の出席番号の書かれたプリントがある席に座る様に書かれていた。様々な学科に分かれているからか、1つの学科の生徒数は少なく、1学科1クラスくらいだ。
オレは青月だからか出席番号が1番で。
番号順があいうえお順って、単純だなぁと思いつつオレは自分の番号が書かれている席に座る。
1番前の席ってなんだか恥ずかしい。
先生が教室に入ってきてからは、あっという間に時間が過ぎて、オレはこれからの高校生活がとっても楽しみになった。
オレが調理師を目指してこの高校を選んだのは、兄ちゃんの言葉があったから。
小さい頃から外で遊んで、色んな友達にからかわれる日々にうんざりしていたオレは、母さんの手伝いがあるからと友達に言い訳をして、良く母さんと料理をしていたんだけど。
出来た料理を『美味しい』と言って兄ちゃんが食べてくれるのが嬉しくて。それだけでオレは料理する事が楽しかった。兄ちゃんに喜んで欲しくて、大好きな笑顔が見たくて。
ある日、料理してるオレを見た兄ちゃんが言ったんだ。オレが大好きなキラキラの笑顔で。
『料理してるせいはとても幸せそうだよ。幸せを感じてる人が作る料理だから、せいのご飯を食べると幸せになるんだね』って。
この兄ちゃんの言葉が、オレに勇気をくれた。
何の取り柄もないオレだけど、兄ちゃんに褒められた料理ならオレにも何か出来るかもしれない。
そう思ったオレは、調理学科のあるこの高校の進学を決めたんだ。将来どうなりたいって、まだ明確な夢はないけど。
小さな期待を胸に、懐かしいあの日の事を思い返していたら、授業と呼べないような、ひと通りの説明をただ聞くだけの時間は既に終わっていた。
制服のポケットに入れてあったスマホが震えて、弘樹からの連絡を知る。オリエンテーションが終わったから、門の前で待ってるって。
オレは弘樹に今から行くとラインを送り返し、足早に教室を後にした。
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