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いっそ消えちまえ (黒月)
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『へぇ、頑張ってんだな。えらいえらい』
「なんかバカにしてます?」
『するわけ無いだろ。単純に褒めてるんだって!蛍は卑屈だなー』
「…切ります」
『わー!待った待った!』
週に一度の電話は、いつもこんな感じ。
近況報告に雑談、それだけ。
『お、もうこんな時間か。明日も朝練だろ?そろそろ寝ないとな』
「…そう、ですね」
いつもより早い会話の終りに、なんとなく、ほんのちょっとだけ表情が曇る。
何を感じたのか、受話器の向こうで黒尾さんが笑った。
『そんな寂しそうな声出すなよ。切れなくなるだろ』
「…!…気のせいです。おやすみなさい」
指摘されたのが面白くなくて、耳から受話器を外すと、けーいーと黒尾さんの必死な声がした。
なんですかと再び耳に当てる。
『近いうち会いに行こうか?寂しがり屋くん』
「結構です。しかも、そんな余裕ないでしょ」
『寂しい事いうなよ。でも、その通りだよなぁ』
あーあと残念そうにため息を吐く相手に、胸が少し軽くなった気がして、意味がわからず首を傾げる。
『次の合同練習までお預けだな』
「そうですね」
『早く会いたいな』
「…そう、ですね」
『お、素直じゃーん。可愛いやつめ』
「可愛くありません。…もう切りますよ」
『はは!またな。おやすみ、蛍』
「おやすみなさい…鉄朗さん」
少しの沈黙のあと、先に電話を切った。
はぁと小さくため息をついて、目を閉じる。
耳にかすかに残る、声を探るように。
そして、思う。
いっそ消えちまえ、と。
こんな『寂しいと感じる気持ち』なんて。
end
──────────
ツンで時々デレ(あんまり自覚なし)な蛍君、うま
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