アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
君がいて俺がいる1 『君の汗が輝いていた日々』(木赤)
-
木赤中編(と見せかけた短編になるかもしれない)です。
木兔と赤葦の出会いから付き合うとこまで書けたらいいなぁ(願望)
言わずもがな全部妄想です!
ーーーーーーーーーー
木兔は初めから木兔だった。
「赤葦京治です。ポジションはセッターです。よろしくお願いします」
梟谷高校バレーボール部に入って初日、その人物は嫌でも目に入った。
梟のような灰色の逆だった髪の毛。猛禽類特有の見る者を見透かすような瞳。
その両目で見られた赤葦は、最初は萎縮した。
しかし、見た目に反して『木兔光太郎』はかなり…残念だった。
先輩より…と言うよりむしろ1年より元気で喧しくて、そしてひたすら目立ってた。
「っだあああ!アウトかーーー!」
大げさに頭を抱えて膝から崩れ落ちる姿を何度見ただろう。
今日も相変わらずだなとボール拾いをしながら梟のような頭を目で追う。でもこれは彼だけじゃない。
「はは!また木兔先輩だよー」
「ホント目立つよな、あの人。見てて飽きない」
他の部員達にも木兔は特別だった。
もう1本!!とよく通る声が体育館に響く。
先輩にも後輩にもウザがられながら、でも憎めないその性格はとても羨ましいと赤葦は思った。
そして、こんな自分とは絡むことなどそうないのだろうと思っていた。あの時までは。
「あか、えーと、あかなんとか!」
ガシッと肩を掴まれて、それが自分を呼んでいたのだと気付く。
「あかあしです。何ですか?」
「そうそう!あかーし!これから暇か?!」
部活終わりで、体育館を後にする部員達の背を見送りながら首を傾げる。
「暇ですけど…」
「そうか!なら、トス上げてくれ!」
これにはさすがに目を丸くした。
なんで俺なんですかと疑問をぶつけると、当然と言わんばかりに「お前のトス、気に入ったから!」と返ってきた。
その瞬間、胸に熱い何かが湧き上がるのを感じたのを赤葦は今でも覚えている。
その日から、赤葦は木兔の放課後練習に付き合わされる事になったのだ。
「だりゃっ!っと、あかーし!高さ落ちてきてんぞ!」
「っ…すみません…!もう1本…!」
「よっしゃ!こーーーい!!」
体育館に響くボールがコートを痛めつける音と、衰えない木兔の声は、へとへとの赤葦を何故かいつも奮い立たせる。
ほぼ毎日ギリギリまで残って二人で練習をしていた。
そんなある日。
「赤葦、ずりーよ。お前だけ木兔先輩と練習なんて!」
「そーだそーだ!俺達も混ぜろよ!」
ここで赤葦は初めて気づく。彼らの言い分は最もで、自分は決して木兔を独占していたわけではなかったが、チームメイトからしたら羨ましい事をしていたんだと。
しかし、今迄木兔も何も言わなかったがために二人きりの練習が当たり前になってしまってたので、これは自分の一存で返事をしていいものなのかと考えていたら、頭の方から豪快な笑い声が降ってきた。
「何だよ!一緒にやりてーのか?なら参加を許可する!」
赤葦の背後で腕を組み仁王立ちでにっと笑う木兔に目の前の部員はやった!と声を上げた。
その様子を見ていた他の部員も何人か便乗してきてその日の放課後はとても賑やかな練習だった。
木兔さんは始終上機嫌でスパイクやブロックに飛び回っていた。
負担が減った赤葦はこれはこれで楽だなと思いつつ、ただ、なにか物足りないようなそんな不思議な感情を持ちつつその日もギリギリまで練習したのだ。
しかし、賑やかだったのはほんの数日だった。
ぼぼ毎日あのハイペースで底なしの練習について来れる猛者は、いなかったのだ。
気づけばまた二人でボールの音と木兔の声が響く日々に戻っていた。
「アイツら、思ったより根性無かったなぁ」
汗を手の甲で拭っていた赤葦にドリンクボトルを差し出しつつ、木兔がそう呟く。
スミマセンとボトルを受取り、赤葦は息を整えながら答える。
「…いや、かなりハードだと思いますよ。木兔先輩との練習」
ごっごっと勢い良くスポーツドリンクを飲む横で、木兔はキョトンと目を丸くして「そーか?」と首を傾げる。
「正直、俺も辛い時ありますし…」
彼らを庇ったわけではなかったがついぽろりと本音をこぼすと、ガっと首に太い腕が絡む。
「でも、お前は根をあげないよな!さすが俺が見込んだ奴だけある!」
ワハハと豪快に笑いながら言われた言葉に、赤葦はくすぐったさを感じて、どうもと目線を床に落とした。
「っよーし!あと少し、気持ちよくスパイク決めてから帰るか!!」
「それは気持ちよくスパイク決めれないと帰れないってことですかね?」
「わはは!そこはお前のトス次第ってことだ!」
「…きちんと上げますから、木兔先輩こそきっちり決めてくださいよ」
やれやれとドリンクを置いて振り返ると、じっと梟の双眸が見ていた。
「その先輩ってのやめねーか?なんか、他人行儀でむずがゆい!」
「は?」
「一緒に特訓してる仲だろーが!木兔さんと呼ぶことをゆるーす!」
だから今度からそう呼べ!と笑う顔に、赤葦は口の端を緩めた。
「分かりました、木兔さん」
満足げにうなづいて、木兔はコートへと向かう。
その背中を見て、思った。
この人に、きちんとついていける様になりたいと。
「一本で終わらせてくださいよ。木兔さん」
「おう!任せとけ!」
キュッとコートを踏みしめる音と共にネットへとかけ出す顔は、とびきり楽しそうだった。
next
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
11 / 13