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あなたを愛します 8にしおりをはさみました!
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あなたを愛します 8
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アルはミカとの記憶の中に心を漂わせていた。
何を考えるでなく、何を思うでなく、ただ湧き上がってくる切れ切れの思い出が頭の中で再生されていくに任せていた。
昔、ジルがアルをからかった時、彼女はミカにも聞いた。
「アルのどこが好きなんですか?」と。
ミカは何と答えたろう?
覚えていない。
しかし、帰宅してからミカは、寂しかったのかもしれないと言っていた。
アルと出会った時、ミカは父を亡くしてほんの数年だった。
直後は悲しみに浸っている暇は無く、会社を継いで多忙を極めていた。
葬儀でも涙をこぼさず、ただ現実味が無いまま時間は過ぎ、気付けば社長として山ほどの仕事に埋もれていた。
多忙はラッキーだったかもしれない。
悲しさも、寂しさも、向き合わずに済んだ。
毎日が飛ぶように過ぎた。
そして、いつしかそんな感情は心の底に沈み、無いもののようになっていた。
父のいないアパルトマンにも慣れた。
自分は寂しくないと思っていた。
事実、それを自覚するのはアルと出会って数年後だった。
アルを好きになったきっかけは多分、一目惚れ。
節操ないなと笑いながらミカはそれを認めた。
外見に魅かれ、その境遇に助けたい、保護せねばと思い、そして、抱いて虜になった。
あどけない寝顔も、対照的に快活な笑顔も、しどけない表情も、全てがミカを魅了した。
ハッキリ言って体の相性は良かったと思う。
それだけ言うと破廉恥だけどとミカは照れたように笑った。
キスも体付きも好みだった。
でも、その荒んだ生活の割には健気なところや、意外と真面目なこと、律義なくせにちょっと破天荒なところ、そのアンバランスが魅力だった。
その危うさに魅かれたのだろうか?
そして自覚していなかった寂しさでアルを欲した。
もちろん、きっかけは寂しさだったのかもしれない。
でも、今はそれが唯一の絆ではない。
今では最良のパートナーを得られたと確信している。
ミカがそう言った時、アルは嬉しくてはにかむように「俺も」と笑った。
そうだよ、ミカ。
ミカ以上のパートナーはいないんだ。
だから帰ってきて、ミカ。
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