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arbre généalogique ~mére~ 12にしおりをはさみました!
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arbre généalogique ~mére~ 12
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ヘリュの葬儀の後、ミカがリクに2人だけで話したいと言って時間を作ってもらった。
リクは家よりも外の方が誰にも会わずに済むだろうと言って、池のそばまでミカを連れて行った。
今は夏だが木陰は涼しい。
2人は大きな木の根に腰を下ろした。
「リク、お願いがあるんだ」
前回の訪問の際、ミカはキュヨスティに慣行酪農から有機酪農に切り替える気は無いか尋ねてみた。
彼は、もう自分は引退だからリクと相談してほしいと言った。
酪農方法の切り替えには時間がかかる。
BIOマーク取得も年月のいることだから若い世代に任せた方が良いと考えての判断だった。
ミカがこれを言ったのには訳があった。
ウィリアムズ商事の扱う食品はどれも安全優先だ。
だから残念ながら慣行酪農をしているこの農場からは製品を買うことはできない。
しかし、有機酪農に切り替えれば取り扱える。
確かに切り替えには勇気がいる。
一種の賭けだと取る人もいるだろう。
だが、最初から販路はできている。
しかもウィリアムズ商事オリジナルブランドとして商品開発と販売はするから生産を請け負ってほしいという、ギャンブル性を下げた提案だ。
直営アンテナショップにパイロット品を置いて反応を見るのもリク達がやらずに済むし、だからリスクも下がる。
そして、うまくいけばウィリアムズ商事を通じてフランス国内で小売りだけでなく卸の販路にも乗せられる。
もちろん、ブランドを冠せばフィンランド国内でも販売可能だ。
この話をした時、リクはもちろん即答しなかった。
リクの家族、シニッカの家族とも話し合わなければならない。
何度も話し合い、ミカともメールやテレビ電話で話し合った。
もちろんアルは全てに目を通し、必ず同席した。
しかし、リク達の結論がなかなか出なかった。
それは当然だ。
一時的にとはいえ収入は下がる。
その後は質の維持を要求される。
簡単には切り替えできない。
ミカもそれは分かっているから何度も話し合うことを勧めたし、焦らないで良いと何度も言った。
もちろん断られることも覚悟していた。
だから今日は今まで話さなかった理由をリクに明かそうと、ミカは時間をもらったのだった。
「リク達がまだ有機酪農に切り替えるかどうか迷ってるのは知ってるから、せっつくつもりは無いんだ。でも、僕の本音を言うと、何としても切り替えて欲しい。どうしても取引したいんだ」
リクは商売の話だと思って聞いていた。
しかし、それほど熱烈に欲してもらえる魅力がこの牧場にあるのか不思議だった。
「理由はアルなんだよ」
「アル? アルって、あのアル?」
「うん、僕のパートナーのアル。知っての通りアルは天涯孤独で僕の養子になった。そして、僕は彼より18も年上だから順当にいけば僕の方が先に死ぬ。僕達に子供はいない。方法は色々あったけど、作らなかったし養子も取らなかった。だから僕が死んだら彼は独りぼっちになってしまう。リクとシニッカはアルとは血が繋がってないし、ハッキリ言って他人だろう。でも、可能であればアルと兄弟のように交流を続けてもらえたら嬉しい」
「それはもちろん! だって戸籍上は甥にあたるし、ミカのパートナーなら義兄ですから」
「ありがとう。だけどね、アルって案外遠慮深いんだ。多分、リクやシニッカの迷惑になるとか考えて交流を自然消滅させようとすると思う。僕はそれを止めたい。だから、ここと取引したいんだ」
「だから有機酪農にしてほしいと言ったんですね?」
ミカは深く頷いた。
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