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男娼とヤクザ/シーズン4(第1話)
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(長らくお待たせしました(いえ、普段のお話を好んで下さいます皆様には、申し訳ありません)やはり、これを中途半端には出来ないと思い、完結へ向かおうかと。ただ、本編が佳境に入るに辺り、あちらの更新を中心に上げていきます。ですが、今タブレットから打ち込んでますが、この下書きが出来上がった後、スマホが突然壊れてしまい頭抱えてます。更新に支障が出ましたら本当にすみません( ..)")
『話がしたい』
普段の優しい表情とは違う、真剣な山代の眼差し。
大和に断る理由はなかった。
プロポーズの返事もしていない。
その話がどんなもであろうと、山代と向き合おう……そう思い、近くへ停めていた車へ大和は誘われるがまま乗り込んだ。
知らされたのは、辛い真実。
「これ……………」
「済まない。お前の事が心配で、あの嵩原ってヤクザを勝手に調べさせてもらった」
大きな封筒から出された、厚みのある書類。
大和の知らなかった『嵩原』が、沢山書かれたそれには、ヤクザになった経緯から昔の事まで調べてあった。
昔の事まで。
「嵩原はお前にとって、決して良い相手じゃない」
「山代さん…………」
「ヤクザだからと言うのは当然だが、二人の間には切っても切れない因縁がある」
「……………え」
不安げに自分を見る大和が、愛しい。
お前の事が心配で……………。
体の良い、もっともな理由を話す山代の腹は、ただ一つ。
大和を嵩原から奪いたい。
あんなヤクザに、みすみす渡してなるものか。
「……………大和は、俺のものだ」
声にもならない声で呟く山代は、大和を哀しませるのを承知で、ある一部分へ指を持っていった。
何がなんでも手に入れたい。
そんな我を忘れる愛が、恋しい相手をも飲み込む。
非情なまでの欲望。
「ここ見て………嵩原は、若い時に母親を亡くしてる。女癖の悪かった父親に苦労させられ、相手の女と父親を恨んで息を引き取った。でも………問題なのは、その相手……………名前、見てみな」
「名前……………あ……っ」
凍り付くような、背中。
好きで好きでたまらない男の人生に見えた、悲しい事実。
「そっ………そんな………」
瞬く間に揺れる瞳が、大和の心に苦しい程の痛みを教える。
何で……………。
「大和のお母さんだよ。大和のお母さんは、嵩原の父親と恋仲になり、多額の金銭を貢がせたんだ。元々裕福ではなかった嵩原の家は、母親が朝から晩まで働いて子供達を養った。だけど、やっと作り出した金も、父親がたまに帰って来ては持って行く……心身共に疲れ果てた母親は、ついには倒れてしまい、帰らぬ人となってしまったんだ」
大嫌いだった、母親。
男を連れ込んでは、いつも外に放り出された毎日。
暑くても寒くても、来日も来日も母親の頭には男と遊ぶ事しかなかった。
だから、捨てたのに。
だから、捨てたのに…………まだ、こんなにも追い討ちをかけるのか!
「嵩……………嵩原………」
ポツポツと紙の上を濡らす涙が、我が親への憎悪と重なり溢れ出す。
なんて事だ。
嵩原は、知っているのだろうか。
いや、もしまだ知られていなくても、知られてしまったらどうしよう。
今度こそ嫌われてしまう。
もう、自分を見てくれないかもしれない。
怖い。
怖い。
「ぅ……………う……」
「わかるだろ?お前が、嵩原の側にいるべきでない事が……………もし嵩原が知っていたら、お前はどんな扱いを受けるかわかったもんじゃない」
「嵩原……………ぁ…」
一度手に入れた視線を無くす恐怖。
愛する人へ与えた酷い仕打ち。
それの原因が、自分の母親である衝撃。
身を屈め、泣き崩れる大和の姿は、山代の目にも痛々しかった。
それでも、間違った事をしたとは思っていない。
「ヤクザなんて、好きになっては駄目だ…………苦労するのは、お前なんだよ。俺だって、仕事で何度面倒な目に遇わされたか…………それが深い所まで入り込んでしまっては、もう後戻り出来なくなる」
ヤクザがろくな生き物ではないのは、本当だ。
険しいとわかっている道のりを、どうして後押し出来ようか。
大和は、俺が幸せにしてやる…………。
「考え直して欲しい……自分にとって、何が大切か」
「………山代……さ……」
涙で濡れた頬へ指先を滑らせ、山代は想いの丈をぶつける。
「愛してる」
トゥルル…………トゥル……
『お客様のお掛けになったお電話は………プッ』
「………………何しとんねん、あいつは」
高橋のビルが見える、路地裏。
数人の組員達が周囲を護衛する中心に、渋い顔で電話を切る噂のヤクザが一人。
最近、組のゴタゴタを収拾に回っていた嵩原だ。
それが、今日ようやく一段落ついた。
「俺が、声だけでどんだけ我慢した思うとんな………クソ」
一目でいい。
大和の元気な顔を見たかった。
「嵩原さん、どうします?」
「どうせ部屋で寝とんやろ……今日は、もうええわ。車、出してくれ」
付き添いの組員の声に、嵩原は溜め息をつき車へと歩き出す。
寝ているのなら、わざわざ起こすまでもない。
明日にしよう。
「たまには、美味いもんでも食いに連れて行ったるか……………」
だがこの翌日、嵩原のその想いが大和に届く事はなかった。
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