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18歳以上ですか?
16にしおりをはさみました!
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16
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一通り片づけが終わったあと、
バタン、と生徒会室の扉が閉じて、園田彰の姿は廊下へと消えて行った。
「何なんスか、アイツ。」
その瞬間に、不快感を隠そうともせず口を開いたのは村崎君。
「俺着いて行けないんスけど。」
「…。」
一人文句を言う村崎君に、誰かが言葉をかけることはなかったけれど、
突然会長から告げられた内容とその態度に対する戸惑いを僕は、みんなからひしひしと感じていた。
「…何を考えているんでしょうか、彼は。」
少し落ち着きを取り戻した蘭が、呟くようにそう言った。
「何も考えてないんじゃないンすか?
とりあえず姫を一人占めしたい自己中野郎。」
「…本当、村崎君は爽やかな見た目を裏切る毒舌ですよね。」
「だって本当のことじゃないスか。
蘭さんだってそう思ってるでしょ?」
「…。」
黙ってしまった蘭に追い打ちをかけるように、村崎君は"やっぱり。"という顔をした。
「会長が何を考えているのかはわかりませんが…、」
そこで静かに話を聞いていた薫先輩が口を開いた。
「彼はなんだか、焦ってるようですね。」
園田彰が、焦ってる…
「どちらかと言うと俺には、余裕綽々に見えましたけど。」
村崎君が言ったように、僕にもそう見えていたから、
薫先輩の"焦っている"という言葉に頷くことはできなくて、僕はまた黙っていた。
「彼にも譲れないものがあるんじゃないですかね、」
詳しいことは知りませんけど、と続ける薫先輩。
そしてその目は、僕のことをじっと見つめていて、
僕はどうしてもそちらを見ることはできなかった。
薫先輩を、こわい、と感じてしまった。
彼の洞察力が、僕にまで…正確には僕の過去にまで及んでしまいそうで、
その瞳に捉えられることを避けたいという願望が、初めて僕の意識下で起こった気がしたのだ。
目を背けた僕には、
僕をじっと見る薫先輩に視線を向けている蘭がいたことにまで、気付く余裕はなかったし、
蘭がどんなに僕のことを考えてくれているか とか
心配をかけないように、という僕の考えが空回りしていたこと とか、
ちゃんとわかっていなかった。
愚かな僕が、同じ過ちを繰り返しているのに気付いたのは、少し後のことで。
僕はそのとき、自分のことに精一杯だったんだ。
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