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遙眞がすっと目を閉じ深く呼吸をする。
きっと、心の準備。
教えてくれるんだ、遙眞のこと。
「夕ちゃんってのは、夕眞っていうんだけど…俺の双子の弟。」
ゆっくりと口が開かれて夕ちゃんの話が始まる。
夕眞は昔から身体が弱くて
運動とかにも制限かかってて
自分ができない代わりにしたいことを俺にさせてた
俺はそれで夕眞が喜ぶなら、ってそれを聞いてたんだ
夕眞が喜ぶのが俺の幸せだったし
俺が夕眞にしてやれる唯一のことだったから
剣道を始めたのも
夕眞が剣道がかっこいいって言ったから
だから、別に剣道なんてやりたくてやり始めたわけじゃない
試合で勝てば夕眞が自分のことのように喜んでくれるから、ただそれだけだった
中学2年の11月
部長に選ばれて最初の試合
夕眞は酷く体調を崩したんだ
そして、入院して
試合を見るのを楽しみにしてたのに
試合当日までその体調は戻らなかった
むしろ酷くなって
危ない、なんて先生に言われてさ
そんな状態で俺が試合に出れるわけがない
だから、俺は行きたくないって言ったんだよ
なのに、夕眞が行けって……
もちろん行ったさ、
勝てば夕眞が助かる、って思ったから
願掛けみたいなものもあったかもしれない
勝つなら大丈夫、って
そして、結果はご察しの通り
俺は勝った
勝ってみんなと喜びを分かちあった瞬間
連絡が入った
夕眞が息を引き取った、って
嘘だと思ったよ
道着のまま病院に走って
嘘じゃなかった、
現実がそこにあった
それから剣道を辞めた
部長だったくせにみんなに何も言わずに部活に行かなくなった
顧問に怒られて
和史、智瑠、それ以外にはきてくれって懇願された
でも、いけるわけなんてないだろ??
もう喜ぶ人がいないんだから
頑なに拒否を続けていたら誰も何も言わなくなった
言えなくなったが正しいんだろうけど
俺は逃げたんだよ
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