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遥
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主治医のやつは、あれから何も言わなくなった。
ただ毎日点滴をいじり、俺らを見て微笑ましそうに笑うだけ。
「はる兄、掛け算九九言えるんだよ!僕頑張ったの」
「おぉ、凄いな…これなら学校も行けるな」
「うん!あっ…ごめん、トイレ…行こう?」
「あぁ、行こうか」
悠斗をトイレまで連れて行き、俺は廊下で待った。
あぁ、疲れた。
最近寝れねぇよ。
本当に…
「ねぇ…あれ遥くんでしょ?ほらあの…」
「あぁ、弟くんがあれの…もうね、本当可哀想」
なんだよ。
聞こえてるっつーの。
「ごめんね、ありがと…ってはる兄?」
「ん?いや、なんでも。早く戻ろっか」
「じゃあ悠くん、これやっといて。掛け算できるんでしょ?」
「はーい」
悠斗に掛け算のプリントを渡し、とわの手を握った。
温かいじゃん。
生きてるじゃん。ね?
握ってないほうの手で頬を触ると、やっぱり温かい。
「とわくん…起きてよ。本当にさ」
「ねぇはる兄、ここ…って泣いてる…の?」
「え?そんな事…」
そう言った俺の声は涙声で、頬には涙が伝っていた。
あぁ、俺やっぱり怖いんだ。
もう起きないんじゃないかって…
俺が信じてないのかな?
「はる兄最近寝てないんでしょ?お仕事で…疲れてるんじゃない?寝ていいよ?」
「ありがとな。でも寝てるからいいよ。大丈夫」
沢山の管に繋がれているとわは本当に消えてしまいそうで。
無くなってしまいそうで…
繋いでいた手をぎゅっと握った。
「えっ…嘘」
「はる兄?」
「とわくんが俺の手…握った」
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