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「....ら.....お....きて.....あ、た.....」
...誰....
廉さん.....?
「...起きて。こんな所で寝てたら風邪ひいちゃうよ?」
肩を揺すられて意識が戻ってくる
床に身体を倒した自分に気付く
いつの間にか寝てしまっていたらしい
優しく起こしてくれたのは廉ではなかった
まだ思考が上手く回らず、ぼやぼやとした視界に映るのは瑠壬の顔だった
その瞬間に、身体に緊張が走る
なんで...廉さんは....っ?
辺りを見渡してもそこに望む人はいなかった
身体を起こし、壁に背をもたれさせると肩に手を置かれた
ビクッと身体を震わせ、潤んだ瞳で顔を見上げる新に、瑠壬は優しく微笑む
「もう部屋から出ていいんだって....廉は授業が忙しいから代わりに俺が開けに来たんだ」
瑠壬の穏やかな声に、まだ新は小さく震えていた
「あ、あとこれは廉からの伝言...『次嘘なんてつこうとしたらただじゃおかない』って...。」
瑠壬からの代言だったが、廉の声で再生される言葉に下唇を噛む
その伝言は、悠との絶縁を意味していた
悲哀に下を俯く新の頭に優しく、ポンポンと手を乗せる
それにすら新は過剰に肩を竦めてしまう
「...廉は怒らせないほうがいいよ。それが新の為にもなるから」
瑠壬の口調は物静かで、恐怖を感じさせるものなんて何1つないが、新はずっと震えていた
その様子に気付いていた瑠壬は、ふふ、と声を漏らす
「そんなに怯えないでよ....虐めたくなっちゃうじゃん。」
頭に乗せた手が頬へと下り、顎を掬われた
上を向かされた新の目は、瑠壬の静寂に笑う瞳を捉える
——...怖い..っ
思わず手を払ってしまい、振り払った事への後悔とその後の展開の先読みで1人焦る
だが瑠壬は、ふふ、と静かに笑うだけだった
「今日は廉に止められてるから何もしないよ。」
そう呟く瑠壬はどこか不服そうだったが、それ以上のことは何もしてこなかった
だが
「俺は知ってるよ。昨日新が悠くんと、悠くんのお部屋で1日過ごした事。」
誰にも知られていないつもりだった新の弱みをチラつかせた
驚愕と絶望に濁した目で自分の顔を見つめる新に、瑠壬は楽しそうに笑ってみせた
「黙っててあげるけど、その貸しはいつか返してね?」
しゃがみこみ、また新の頭に優しく手を乗せてそう呟くと、すぐに立ち上がり部屋を出て行った
そんな....
誰にも見られてないと、思っていたのに....
よりによって瑠壬さんに見られてしまった
貸しを、返す...
瑠壬の提示した「貸しを返す方法」はきっとアレしかない
嫌だ...
瑠壬さんは加減を知らない
でも、やめてくれるわけが無い...
俺にできることは、ただひたすら耐えるだけだ...
未来への絶望と抵抗できない現実に、涙が込み上げる
縋る相手もいない
助けてくれる人もない
俺は独りだ
友達はいらない
そう思うが
もし悠がその存在になってくれたら
俺は喜べる...?嬉しい...?
あいつにはあいつの生き方があって
あいつの仲間がいる
俺の為に
俺なんかの為に
それを奪っていいのか....?
自分で自分の言っていることが矛盾していることくらい分かっている
独りで生きる道を選んだのは
俺の方だ
仲間だと、味方だと
言ってくれた奴を
傷つけて、突き放したのは俺の方だ
それでみんなが楽しくいられるなら
それでみんなが楽しくいられるから
でも、独りはやっぱり
嫌だよ...
感情が狂う
思考が狂う
溢れた涙が止めどなく零れ落ちて、シャツの袖を濡らす
ここでは死ぬ事も許されない
次第に声が漏れ、嗚咽が混じる
誰の為に、何の為に
自分は我慢して耐えているのだろうか
もう、分かんないや...
俺が生きてる意味って、何....?
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