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それからも、豊峰やタクト、他にも何人かの男子や女子たちが俺を気にかけてくれ、俺の学校生活は順調に過ぎていった。
放課後になれば、誰かしらが交代交代で、俺の委員会に付き添ってくれ、クラス内でも、いつの間にか、俺を囲む輪が広がって行っていた。
そんな日々が平穏に流れ、中間テストの結果発表の日が訪れた。
「んー?どした、翼」
個人票を見つめ、自分の席で固まっていた俺に、豊峰が声をかけてきた。
「真っ青い顔をして…。悪かったのか?」
ひょいっ、と俺の個人票を覗き込んできた豊峰の顔が、くしゃりと歪んだ。
「はぁっ?おまっ、2位とか。それでなんで、んな絶望的な顔してんだよっ」
嫌味かっ、と派手に叫んでいる豊峰だけれど…。
だって絶望的なんだもん。2位だよ…終わった。
『俺、完全にオワッタ』
震える文字を書いて見せた俺を、豊峰が変な顔で見てきた。
「そういや、トップがどうとか、前に言ってたけど…」
『うん。どうしてもトップになりたかった』
じゃないとお仕置きが…。
火宮と真鍋から、地獄のようなお仕置きが。
うぅ、と頭を抱えた俺に、ふと隣から、あまりに呑気な声が聞こえてきた。
「あー、なんか、ごめんね?」
え?紫藤くん?
「トップ、もらっちゃった」
ニコリと、陽気に笑っている紫藤が、ペラリと個人票をこちらに向けて見せてくれた。
『あーっ!嘘ぉ…』
「はっ、また和泉が1位か」
ブレねぇな、と笑っている豊峰なんだけど、俺の目は、紫藤の個人票の、総合得点に釘付けだった。
『3点差…』
たったそれだけで、分かれてしまった明暗。
いっそ手が届かないほど突き放されての2位ならば、諦めもつくかというものを。
『悔しすぎ』
後1歩で取れたはずのトップを逃し、俺には恐ろしいお仕置きが待ち受けているというのか。
『帰りたくないー』
ぐしゃぐしゃと、無意味な曲線をメモ帳に書いてはなぞり、書いてはなぞりをしながら、俺はグズグズと席に座っていた。
「あはは。テストの成績が悪くて帰宅拒否とか。現実にいるんだ」
だから、笑い事じゃないんだって。
「トップじゃないと駄目とか、あの人たち、そんなスパルタなん?怖っぇ」
もう、他人事だと思って。
「まぁでも、いつまでも居残っていてもしょうがないよ?」
「んだな。それに翼、お迎え来ちゃうんだろ?どの道逃げられないじゃん」
そうなんだよね。そんなことは重々承知なんだけど。
『あーっ、だからって、素直にノコノコ帰れるかって言ったら、別問題なんだよー』
メモ帳に書き殴った叫びも虚しく、俺にはこの地獄への切符を持って帰宅するという選択肢以外、存在しなかった。
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