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そうして大分のんびりと、散歩をして満足した俺は、宿に戻って一息ついていた。
「もうすぐ食事だか…どうする?ひとっ風呂浴びてくるか?」
特に汗はかかなかったけれど、散歩の後だしな。
ーーうーん…。
「なんなら背中を流してやるぞ」
っ!
ニヤリと笑う、その悪い顔は…。
『嫌ですよっ?一緒には入りませんからね』
嫌でも分かる、悪い予感に、急いでメモ帳にペンを走らせる。
そうしたらますます火宮の悪い笑みが深くなった。
「遠慮するな」
『遠慮じゃないです。お風呂をゆっくり楽しみたいんです』
だってあなたと入ったら、絶対にただの入浴じゃ済まなくなるでしょう?
「ククッ、なにを警戒している」
それは…。
「それとも期待か」
なっ…。
「旦那の好意を無下にするのか」
旦那って…。
もう本当、なんでそんなに楽しそうなんだ。
『本当に、本当に、背中を流すだけですか?』
「あぁ。安心しろ、もちろんそれだけだ。なんなら俺は服を着たまま入ってもいい」
『絶対ですね?』
「おまえがそういうならな」
うー。そこまで言うなら、信用していいか。
『分かりました』
まぁお風呂は入りたかったし。
メモ帳を置いて立ち上がった俺に、火宮が満足そうに微笑んだ。
っ…。
で。
やっぱり。
ひぃぁぁっ!
声が出ない喉を仰け反らせて、俺は執拗な火宮の指先から逃げるように、必死で身を捩っていた。
「ククッ、どうした?翼」
こンの嘘つき!
信じた俺が馬鹿だった。
確かに火宮は着衣のまま、やっていることも、ただ俺を洗ってくれているだけだけど。
その手つきがいやらしい。
絶対分かってやっているその触れ方が憎らしい。
っ…。
せっかく、めちゃくちゃ贅沢な景色を独り占めの、最高の露天風呂なのに。
それを楽しむ余裕もなく、火宮の悪戯な手に翻弄される身体が悔しい。
っ、やめっ…。
サワサワと、泡のついた手で脇腹を擦られて、ピクンと身体が震えた。
その手がスルリと背中に移動し、ツゥーッ、と背骨を撫でてくる。
やぁっ…ン。
ゾクゾクッと震えた身体が飛び跳ねて、中心に熱が集まったのを感じた。
はぁっ、あっ、もっ、やだ。
1度得てしまった快感は、もうどこを触られても気持ち良くて。
「ククッ、どうだ?翼。痒いところはあるか?」
とてもいい感じの力加減で髪を洗われ、頭皮を擦る火宮の指先さえ心地いい。
ンッ…。
やばいな、もう。
一応タオルは掛けてあるけど、ソコがムクムクと大きくなってしまっていることに、俺は気づいている。
「ん?翼?」
今度は前か。
胸元に滑ってきた火宮の手が、なんともヤラシく、胸の飾りの上を撫でていく。
洗われているといえばそれまでで、けれど泡のついた滑りのいいその手のひらが、突起の上を擦る度に、ゾクゾクと上がってしまう快感は堪えようがなくて。
んあっ、アッ…。
あぁ、今ばかりは声が出なくてよかった。
だってもし声を出せていたら、間違いなく嬌声を上げてしまっていただろうから。
っ…。
意地悪、と思って火宮を振り返り、睨みつける。
シラッとした顔でボディーソープを泡立てている火宮は、あくまで洗ってやっているだけだ、という表情をしていて。
っーー!このどS。バカ火宮!
そうやって、俺の反応を楽しんで、ギリギリまで追い詰めて。
「なんだ?翼。洗うだけにしろ、と言ったのは、おまえだからな」
この揚げ足取り。
そういうところが、本当、意地悪。
っ…。
「ん?ほら」
今度は足、と前に回り込んできた火宮の、服をしっかり身につけたままの姿を見て、俺の中で何かがプツンとキレた。
「ッ…」
へっへん、ざまぁ。
ほら、服脱ぎなよ。
きゅっ、とおもむろに、シャワーの蛇口を捻ってやった俺は、ザァァッ、と降り注いだお湯でずぶ濡れになった火宮に笑ってやる。
「こいつめ」
ニヤリ、と妖しく頬を持ち上げた火宮が、バシャ、ビシャッと濡れた服を脱ぎ捨てた。
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