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ゆきごころ-4
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「沢井流……やってたの?」
桜の精の如く儚げなこの人物が道着姿で演武をしている姿を想像しようとするけど、どうにもうまくいかない。
天女の羽衣纏ってヒラヒラと舞を舞ってる姿の方が出て来てしまう。
そういう俺も人のこと言えないけど。
「もう10年以上前ですけどね。私の意思とは関係ないところで否応なしに道場に放り込まれたのですが、稽古は厳しいし、先輩は怖いしで練習が嫌で嫌でしょうがなかったんです」
「何で辞めたの?」
「元々、何かあった時のために段証だけ取っておくという約束で始めたんです。なので段証を貰ったその日に辞めました」
「!」
花が咲いたような微笑みは何故か俺のよく知っている人の笑顔にそっくりだった。
既視感の正体はこれかと思ったけど何か違う。そもそも顔が全然似てないし。
それにしても何かあった時って何だろう?
これだけ綺麗な人なんだから襲われた時用に護身術として習ったとかかな?
その疑問をそのままぶつけてみると意味深な答えが返ってきた。
「流派を継ぐものがいない時の保険としてです」
継ぐ?
この人が?
保険?
何だかよくわからない。
「尤も、今となってはそんなもの必要なかったんですけどね」
ん?
どういう事だ?
さらに謎は深まる。
「天賦の才に恵まれた悠夜という逸材が今後の沢井流を背負って立ってくれるので」
悠夜って呼び捨てにするという事はおじちゃんよりも年上なのかな。
「これは誰にも話した事がないのですが」
そう前置きをして、いかにも大事な事を話しますよといった体で間をおくからこっちも身が引き締まる。
「本当は段証を取ったのは志朗の為でした」
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