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打ち震える鼓動 10
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俯いていると、不意に新藤に引き寄せられ頬にキスが降ってくる。
「ちょっとイジメすぎちゃった? ごめんね、千秋」
「?」
言っている意味がよく理解できなかったけど、新藤は「来てもいいよ」と一言そう言った。
ゆっくりと視線をあげると新藤は笑っていて、ちょっと安心する。
でも、イジメすぎたって何だ? って、考えていると新藤が俺の頬を指の背で撫でた。
「でも、千秋が悪いんだよ」
「何がだよ」
「即答で来るって言わない千秋が悪い。だから千秋が行きたいって言うまでイジメる羽目になった」
そう言われて初めて新藤の意図に気付いて、顔が熱くなる。
「…………なんだとコノヤロー!!」
結局のところ、俺の恋愛マスターへの道は程遠いということだ。
まんまと新藤の罠にハマっていたんだから。
すごいムカつくけど思惑通りに動いてたんだと思うと恥ずかしくてたまらない。
そんな時、下から母さんが呼ぶ声が聞こえたので勉強は切り上げてダイニングに向かうことにしたんだけど。
……俺はここである重大なことに気がついたんだ。
それは新藤が立ち上がり、ドアの手前で振り返った時のことだ。
「お、おい、新藤! ちょっと待て!」
「何?」
「何じゃねぇよ!」
それは俺がさっき新藤の首につけたキスマーク……。
つか、隠れるとこじゃねぇから丸見えだし。
来た時はなかったんだから、俺がつけたってバレるし。
「おい新藤! やっぱり今日はこのまま帰れ」
「なんで」
「首にキスマークがついてるからだよ!」
「別に気にしないから大丈夫」
「俺が気にするんだっつーの!」
「自分でつけたくせに随分と偉そうに言うんだね」
……うっ。そこを突かれてしまうと何も言えねぇじゃねぇか。
どうしよう。コイツは帰らないつもりだぞ。
何がなんでもうちの夕飯を食って帰るつもりなんだ。
なんか貼るか?
「そうだ。絆創膏貼れ!」
「余計に目立つと思うよ」
「じゃあ、湿布!」
「臭いから嫌だ」
「いいからコレを貼っておけ。首が凝ったことにしろ」
新藤は納得いかない様子だったが、渋々言うとおりに湿布を貼ってくれた。
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