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21夜
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それから、幾月かが過ぎた。
あの火事のはいつの出来事だっただろうか。
あの日から、満の心は壊れてしまった。
いつしか、考える事を放棄し、何も感じない為に感情を閉ざした。もう笑うことも、感情に任せて怒る事も、更には己から動く事もなくなった。ただ、何かを思っているのか、ふとした時に涙だけが満の頬を静か伝っていた。
もしかしたら、その無意識の行為が満の最期の砦なのかも知れなかった。
そんな満の側を、満月は片時も離れることはなかった。
また、人形と化した痛々しい姿の満を目の当たりにしても、満月は甲斐甲斐しく世話をして、満足げに微笑んでいた。
今二人は、初めて満が目を覚ました部屋の縁側に腰掛けていた。
そこは和室で、陽の光がよく当たる明るい部屋だった。また、部屋には埃一つ見つからないほど清潔に保たれていた。
縁側から見える庭もよく手入れが行き届いている。植物はいつも青々としていて草花は潤っていた。もしかしたら、天界の植物は枯れることがないのかも知れない。
穏やかな風に吹かれ、暖かな日にあたり、満月に後から包み込まれるようにして座っている満。傍から見たらとても絵になるほど二人は美しかった。
しかし、穏やかな空気は満月の言葉によって、甘く、艶やかなものへと変換されていく。
「ねぇ満、口を開けて」
耳元で囁かれた言葉に、満はゆっくりと身体を動かした。
少し首を捻って、満月の顔を見上げると、徐に口を開ける。
「ん……」
満月はそれを見てほくそ笑むと、唇を合わせた。
「ぁ……ふ、ん……」
されるがままの満の舌を、満月が丁寧に絡めとる。
ゆっくりと、ゆっくりと唾液を交換するように。
それから徐々に激しくしていくと、満はすぐに頬を赤く染めて、息を荒くした。
満の柔らかな舌を散々に弄んだ後、満月は次に満の唇を甘噛みしたり、上顎を舐め上げた。
それだけで、満は身体をふるふると震わせる。
もう、散々に覚え込まされた所業だった。
満月というだけで無条件に身体は開かれる。
まるで、パブロフの犬のように。
長い長いキスを終わらせると、満月は満に向かい合って座るよう指示をした。
満月に跨った満は、満月を見詰めた。
否、顔がそちらを向いているだけに過ぎないのだが。
満月もじっと満を見詰める。
やがて満の頬を優しく覆った。そして、満の額にキスを落とし、呟く。
「また泣いているね」
そう言った満月の表情は、とても穏やかだった。
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