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18歳以上ですか?
-18-にしおりをはさみました!
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-18-
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俺の作った料理を美味しかったですと言いながら帰る客を何人も見送る。もうこの店に通って長い常連客ですら俺の笑顔は見たことないだろう。笑うことが下手くそな俺は笑顔で接客できないことを申し訳なく思い、頭を下げるときは深く丁寧にしようと心掛けていた。
最後の客を見送り、片付けに入る。明日は定休日だから仕込みもない。テキパキと要領よく片付けをする凪を横目に、今日は少しこのお坊ちゃまの中に踏み込もうと決めた。
「今日も忙しかったですね~」
「あぁ。俺はすぐに酒を飲みたい」
「狐塚さん、お酒よく飲むんですか~?」
「いや、日曜の夜だけって決めてる。定休日前だからな」
「へぇ。めっちゃお酒強そうだから毎日飲んでても違和感ないですよ~」
「弱くはないが強くもない。そこまで酒が好きってわけでもないからな」
開店前に俺がキスしたことを忘れているかのような会話。今はそれに合わせておいてやるが、家に上がったらそうはさせない。
「凪は酒、飲むのか」
「未成年になんて質問してるんですか~」
「そうだったなお前はお坊ちゃまだったな」
「知ってます~?今時のお坊ちゃまも未成年のうちからお酒がぶがぶ飲むんですよ~」
「なんだ、やっぱり飲むのかよ」
「俺はお坊ちゃまじゃないので飲みませ~ん」
「どっちだよ」
食えないやつだな、と思う。確かにこいつが酒を飲む姿が想像できない。ピアノやバイオリンでも弾いてそうな面だ。やんわりとお坊ちゃまを否定したが、神村学園に通っている時点で本人がどう言おうがお坊ちゃま確定だ。
この県でトップの偏差値を誇り、政治家や弁護士など社会的地位の高い人間の子供が通う高校だと有名だ。そんな奴が何でバイトなんかしようと思ったのだろうか。
「今更だけどお前、何でバイトなんかしてんだ?」
「え、もう首ですか~!」
「ちげーよ。お坊ちゃまなんだから金には困らねーだろ。あの学校の生徒は土日もずっと勉強してるイメージだったけど、勉強しなくていいのか?」
「何そのイメージ~。確かに平日は学校終わったら夜中まで勉強させられてるみたいだけど、土日は自由ですよ~」
「させられてるみたい、ってお前は違ぇーの?」
「…させられてま~す」
何だろう、こいつの言葉はたまに他人ごとのように聞こえる。自分を客観的に見てるのか、自分のことはどうでもいいと思っているのか。全然高校生らしくない。
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