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遠くでいい匂いがする。
それに少しあたたかい。
優しく、優しく抱きしめられるような夢から手を引かれて現実へ帰ってくる。
こんな幸せな夢いつぶりだろう。
「…藍川さん。」
「ん、ごめん…寝てた…かな。」
「もう少し寝ますか?一応出来たんですけど…」
「本当だ、いい匂い。目も覚めたからすぐ食べたいな。」
「どうぞ。口に合うかわかりませんが。」
そう言われて目の前にキラキラのご飯が出される。
うどんと卵、それに梅干し。
優しい匂いと暖かい湯気に包まれる。
「あんかけ卵うどんです。…あ、梅干し借りました。」
「美味しそうだなぁ…あれ、梅干しなんかあった?」
「すごい綺麗に漬けてありましたよ。」
「あぁ…昔、偉い作家さんにもらったやつかな。すっかり忘れてたよ。…頂いていいかな。」
「はい、熱いうちにどうぞ。」
お言葉に甘えて箸ですくい口へ運ぶ。
シンプルな味なのに、温かくて人の味がした。
あぁ そうだ。
手料理ってこんなに美味しかったっけ。
「どうですか…?」
「ん、っ…とっても美味しいよ。手料理なんて食べたのいつぶりだろう。」
「いつから独り立ちしたんですか?」
「…15の時だから、八年前かな。懐かしいなぁ。」
その言葉に小波くんは何も返してくれなかった。
早くうどん食べ切れってことかな。
熱々のうどんを出来るだけ早く口へ押し込んでいく。
ずっとカップ麺とか冷凍食品しか食べてなかった体は大喜びでそれを飲み込んでくれる。
食べきってお汁まで飲み干した後、パチンと手を合わせる。
「ご馳走様でした。すごく美味しかったよ。」
俺は本当に、恵まれてるなぁ。
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