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夕日が落ちて星が登るまでただ空を見ていた。
今はもう部屋の中は薄暗い。
残念なことに月明かりではなく、近くの家の灯や街灯に照らされた部屋ではそんなに苦労はしないけれど。
ソファの上で何度目かの寝返りを打ちまた空を見る。
一人でいればやることなんて何も無い。
息をして、瞬きをして、あとたまにこうやって寝返りを打つくらいだ。
「…生きてる意味、あるのかな。」
なんてことまで考えてしまうくらいだ。
作家として生きていた頃は、時間さえあれば本を書いていた。
テレビ局に呼ばれ、ただ俺のまま画面に映し出されれば夜は誰かにご飯に呼ばれた。
美味しいものを食べて価値観の話を聞いて、そしてまた本を書いた。
週末はどこかの書店でサイン会、なんて大層なものを開いてもらったりもした。
休みなんてなくて毎日生きていたのに今はこの通りだ。
明日の朝、小波くんが来るまで眠ることもせずこうしているだけ。
「あぁ…明日は土曜日か。」
外に出れば知らない人に手を握られる。
知らない人のフォルダに俺の顔が残る。
テレビを見れば誰かにバカにされて、携帯を見れば知らない俺が書き綴られている。
もうそんな日々。
生きている意味を考えるのも仕方ないと思う。
あたりがすっかり暗くなった。
ご近所さんはきっともう夢の中だ。
俺もマネして目を閉じる。
暗闇の中、目を閉じれば誰かの声が聞こえてきた。
コソコソと 誰かの話をする声が。
『藍川は落ちこぼれだ』
『もう誰ひとり期待していない』
ほら
『兄ちゃん』
『俺、兄ちゃんのファン一号になる。』
あぁ 許して
『天才作家藍川 転落人生』
『薬中作家』
『殺人歴あり』
『お前なんて 産まなきゃよかった。』
慌てて目を見開き飛び起きる。
頭がおかしくなりそう
誰か 誰か助けて
ねぇ
きみの手がないと 眠れないよ
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