アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3
-
大きなレジ袋を両手に持ったままなんとかポケットから合鍵を取り出す。
…鍵穴に刺さらない。
「あー、くそ…」
仕方なく片方を地面において鍵を回す。
今朝、いきなり藍川さんから
""
味噌汁と肉じゃがと焼き魚が食べたいです♡
""
なんてメールが来た。
そんなの言われたら俺は材料を買いに走って作るしかない。
それにしても何でこんなthe和食…?
「藍川さん、おはようございま…す、…」
「おはよう小波くん。麦茶沸かしてみたんだけど、ドクダミ茶みたいな味するんだ。…飲む?」
「飲みません。」
いつもはソファで死にそうな顔をしてる藍川さんが今日はきっちり着替えて台所に立っていた。
苦い匂いがしてくるそのお茶は多分少ない水で煮えついた麦茶。
「どうしたんですか、もしかして特別な日だったり…?」
「そんなことないよ。さ、お茶の用意は出来たから後はご飯だね。」
「あぁ、ちゃんと買ってきましたよ材料。前のスーパー朝7時から開いてるんですね、助かりました。」
「うんうん。だからここに引っ越してきたんだよ。便利だよね。」
冷蔵庫へ買ってきたものを放り込みながら楽しそうに話す藍川さんへ相槌を打つ。
コンビニは近くにないけど、7時から夜の12時までやってるスーパーがあるなら充分なんだろうな。
「…さ、俺はデザートの準備しようかな。」
「え"。何作るん…ですか…?」
「明らかに嫌な顔するね。100均で売ってた牛乳入れるだけのプリンだよ。」
「あぁ…それなら大丈夫そうですね。手伝います。」
「あはは、全然信用してくれてないなぁ。」
全然大丈夫そうじゃない。
この人なにやらかすかわからないからな…
藍川さんがパッケージを丁寧に開けている間に分量通りの牛乳をカップに入れて鍋の横へ置く。
まぁ、これは牛乳の量さえ間違えなきゃ後は混ぜれば出来るし大丈夫だろう。
俺は冷蔵庫へ残りのものをまた入れていく。
肉じゃが出来るまでの時間、何するかな…
「これを温めるの?」
「そうですよ。」
「レトルトカレーみたいだね。」
「え?レトルトカレーは溶かしたりは…ぅ"、何してるんですか…!」
「うん?入れるんじゃないの…?」
鍋に入った牛乳に沈むプリンの元の袋。
なんでこの人はここまで期待を裏切るんだろう。
慌てて箸で袋を救出して藍川さんへ目を向ける。
驚いた顔で袋を見ながらパチパチ手を叩いて楽しそうだ。
「これは、開けて、入れるんです。中身だけ。粉だけ!!!」
「…なるほど、そういう入れ方もあるね。」
「どうしてこういう発想になったんですかね…!?」
「あはは、失敗したなぁ。やっぱり君がいないとダメみたい。」
クスクスと笑って少しも参ってないらしい。
…あぁ、もう。
これだから この人は一人にしたくないんだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
129 / 208